「社員の生産性」より「より良い仕事体験」が主流に
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月27日 16時9分
自分が何かの一部であると感じさせ、職場との関係をより良くする
職場での体験/経験をどのように改善できるか――これは効率よりはるかに広い概念です。自分が何かの一部であると感じさせ、職場との関係をより良いものにする、そのためにオフィスデザイナーやマネジャーたちは、ホテルでの体験や小売店舗でのカスタマー体験を管理するのと同じ方法で職場での経験を管理しようとしています。
例えばイギリスのヘルスケア企業であるブーパ社では社員のウェルネスの増進に力を入れています。オーストラリアで不動産事業を展開するレンドリース社はウェルネス分野の責任者を置き、福利向上に取り組んでいます。
ウェル・ビルディング認証** という国際認証制度もできました。認証を得るには一定の基準をクリアしなければなりません。空気や飲食物の品質はもちろんのこと、終日デスクに座ったままにならないよう、さまざまな場所で運動や仕事をする機会を提供しているかといった点も評価されます。
オフィス革命は今まさに進行中なのです。1世紀以上に渡って職場は"完全密封"され、プライベートと完全に切り離されていました。仕事をするにはオフィスに行って専用ツールからデータにアクセスしなければならず、私服で出勤することもあり得ませんでした。社員はオフィスにいる間、人生を一時停止しなければならなかったのです。
しかし最近はカジュアルな服装で出勤できるようになってきましたし、オフィスの一角にカフェが設けられて飲食の自由度も格段に高まりました。人々はオフィスの中だけでなく、外でも働けるようになってきています。となると、オフィスに行く目的は仕事をするためというより、人と会うためという色合いが濃くなってきます。オフィスはより社会性を帯びた、都市の一部としての顔を持つようになってきたのです。
仕事と生活のプラットフォームが同じになった
前編で、オフィスの進化のステップとして、効率を重視する「テーラリスト・オフィス」、コミュニケーションを重視する「ソーシャル・デモクラティック・オフィス」、人やモノをデジタルでつなぐことを重視する「ネットワークド・オフィス」があること、さらに都市との有機的なつながりやワーカーの生活と仕事の融合を重視する「フュージョンオフィス」の時代へ進んでいくだろうと説明しました。
WeWorkのような企業が今やWeLiveに移行しようとしているのは驚きではありません。「生活×仕事場」の試みは1990年代後半にも見られました。今では多くの人が家で仕事をしていますし、出勤前にもメールチェックをしたりします。オフィスに着いたら着いたで仕事の合間にフェイスブックを見たりする。スマートフォンには部下からの報告メールも、友人からのテニスの誘いのメールも入ってきます。
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