「社員の生産性」より「より良い仕事体験」が主流に
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月27日 16時9分
近い将来に待ち受けるこうした変化を、オフィスデザイナーやファシリティマネジャー(施設管理者)は十分に理解しておかなくてはなりません。建物を管理するということは、単にビジネスの技術的側面だけを管理するのではなく、社会的側面も管理することになるからです。
ビル内の人の動きを把握し、作業プロセスを提案することも
ユーザー個々のフィットネスブレスレットを通じてデータを収集し、各人の快適さやストレス、建物の周囲状況までも監視するようになるでしょう。誰かがスマートカードや携帯電話のアプリを使ってオフィス内のレストランで何か注文したら、その人のその日のカロリー摂取量も分かります。そうしたデータを建物の熱と光に照らして調整することができれば、システム全体の有機的制御が可能になるはずです。
あるいは、施設管理者には建物内に誰がいるか一目瞭然なので、「プロジェクトメンバーがいま全員建物内にいるので、会議を開くとよいのでは?」などとメッセージを送ることもあるでしょう。建物自体が作業プロセスを促すことになるわけです。こんなふうに考えると、スマートビルの可能性は無限です。
従って、これを管理する人々には高度なスキルやセンスが問われることになります。人事、不動産、ITが一体化され、最高技術責任者のような人がウェルネスを担当する、そんな未来が見えます。それは20~30年も先の話でなく、4〜5年の間に実用化されるでしょう。
将来のファシリティマネジャーの役割は高度にデジタル化され、今とは全く趣が異なってくるはずです。多くのスタートアップ企業ではエクスペリエンス・マネジャー(経験豊富なマネジャー)と呼んでいるそうですが、うなずける話ですね。管理の対象がもはや「施設」ではなく「人」だからです。私の知人には「バイブマネジャー」もいますよ。社内の「雰囲気」を演出してみんなの意欲を引き出し、生産性を高める役割を担っているということです。
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(2017.1.27 ロンドンのヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザインにて取材)
text: Yoshie Kaneko
photo: Saori Katamoto
* WORKTECH(ワークテック)
働き方やワークプレイスの未来について考えるフォーラム。 2003年にロンドンで始まった。2017年は世界16都市で順次開催される。
WORKTECHアカデミーはフォーラムで得られた知見や事例を元に、グローバルコミュニティ全体で知識体系や課題解決策の構築を目指す。
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