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習近平が絶対的権力を手にした必然

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月31日 16時0分

薄が重慶で使ったテクニックをまねて、習は党に逆らいそうな市民を大量に逮捕し、オープンになりかけた社会を再び閉ざすことに邁進した。12年には、比較的自由な言論の場として人気だったマイクロブログの新浪微博の有力発言者を直撃し、沈黙させた。かつては限定的ながらも活動できていた人権派の弁護士も活動の場を失ったり、逮捕されたりするようになった。

ロシアを手本とする新たなNGO法で外国からの資金の受け取りを制限し、多くの組織を怖がらせて閉鎖させた。外国の教科書は中国の大学から一掃された。新聞は、愛国主義と際限のない習の賛美を繰り返す宣伝媒体と化した。



共産党大会で席につく江沢民元国家主席 Jason Lee-REUTERS

集団指導体制の終わり

党大会までの期間の習の目立ち方は、毛沢東以来の中国の指導者をはるかに上回っている。胡の場合は、国家主席時代でさえ存在感がなかった。だが習はあらゆるところに存在する。その姿はスローガン、ポスター、毎日のテレビに現れる。

習はこの権力で何をするのか。彼が抵抗を圧殺する権限を持った今、経済改革が次のステップだと信じる楽観主義者は、少数ながら存在する。

だがこれまでの兆候からすると、彼が目指すのは、経済など、生活の全てにおける共産党政権の優位性だろう。

それは党大会の冒頭で習自身が述べたことでもある。アメリカ人が9.11テロ以来体験しているように、治安を最優先にした国が警戒を緩めることは、強化するよりも難しい。

習の本当の人気がどれほどのものかは判断が難しい。確かに彼の基盤は、共産党の中心的な支持層である中年の住宅所有者にあるようだ。だが党内の基盤はそれほど確実ではない。

習の3代前に最高指導者だった鄧小平の功績は、49年の建国時から続く政治的な復讐のサイクルから国を脱出させたことだ。

その取り決めの一部である集団指導体制は、最高の地位にいても永遠に安泰ではないと知っている歴代指導者に支持されてきた。習は全てではないにしても、中国をまとめてきたそのつながりの一部を切り離した。

笑みを浮かべ、生き残るために卑屈な態度を取っても、党内の多くの人は個人的な憎悪を育んでいる。つまり習は22年に自分の正式な地位を退いても、報復を恐れて自らの権力を簡単に手放すことはできない。

重慶や大連でも、誰一人として習を直接的には批判しない。しかし今も薄を褒める人はいる。それは、いわば暗号化されたメッセージだ。自分たちのお気に入りだった政治家を失脚させることで権力基盤を固めた男を、決して許さないぞというメッセージである。

(筆者は匿名の中国特派員)

From Foreign Policy Magazine


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[2017.10.31号掲載]
フォーリン・ポリシー誌中国特派員(匿名)


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