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北朝鮮経済の「心臓」を病んだ金正恩─電力不足で節約に必死か

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月8日 11時0分

その経済建設の要であるはずの電力がどんな危機的状況なのかをこう語る。

<火力発電所と水力発電所で電力生産を増やせないでいる主たる原因は、石炭と水の不足にあります。内閣と石炭工業部門、鉄道運輸部門では火力発電用石炭の保障を、最優先的に力を入れ、石炭の予備を1週間分以上とすべきだとの偉大な将軍さま(金正日総書記)の遺訓を貫徹しなければなりません>

<当面の電力需要を保障するといって、補修の周期を守らず、発電設備を酷使させているが、これは科学技術を無視した先のことを考えない近視眼的な態度で、国の電力事情をより切迫させる行為です>



軍事を最優先にと指示

明らかにいらだっている。それは演説の1年前、2016年5月に36年ぶりに開いた朝鮮労働党大会で、金正恩は「国家経済発展5カ年戦略」を提示し、電力問題解決へ力を注ぐよう訴えたが、状況は一向に改善しないままだからとみられる。電力の有効活用のため、国家統合電力管理体系も導入したことも明かし、こう述べる。

<平均主義をやってはいけない。電力が足りない条件で、当分の間は国家的に重視すべき単位に、電気を優先して送る規律を打ち立てなければなりません>

つまり軍事など優先順の高いところへまずは電力を供給せよというわけだが、そうした方針があったにもかかわらず、電力不足でレーダーが機能不全に陥っていたとするならば、怒りは相当なものになるだろう。

演説で金正恩はこうも言っている。

<貴重な電力を浪費するのは重大な犯罪行為です。電力使用の限度超過、不法な電気使用に対しては誰であれ、どの単位であれ、財政的、法的制裁を加えなければなりません>

そして幹部らを叱責する。

<座して心配するだけの憂国の志士ではなく、問題を一つでも解決する実践家型の幹部が必要なのです>

さらに幹部が先頭に立って「節約闘争」を繰り広げろ、とハッパを掛ける。

<「ちりも積もれば山となる」というが、幹部らが夜、事務室で仕事をする時、室内灯の代わりに卓上灯を利用すれば、少なくない電気が節約できる。住宅や機関庁舎の廊下の照明に自動感知器を設置するなど節約の方法を開発し、導入しなければなりません>

最高指導者の言葉にしては、いささか指示が細か過ぎる気もするが、それだけ事態は切迫しているのだろう。また、これからは多くの電力を消費するタイプの建築物の設計は承認しないとし、平壌の黎明通りは省エネ型建築のモデルケースだから全国に広めよ、と命じてもいる。

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