セクハラ告発#MeTooは日本にも広がるか
ニューズウィーク日本版 / 2017年11月28日 6時35分
<ニューズウィーク日本版11月28日発売号(2017年12月5日号)は「セクハラは#MeTooで滅ぶのか」特集。「#MeToo」を合言葉にしたセクハラ告発が世界に拡大中だが、なぜ男性は女性に対する性的虐待を止められない? 「告発」最新事情や各国への広がり、男性心理も分析したこの特集から、日本の現状に関する記事を転載する>
少したって振り返ったとき、2017年10月は性暴力の問題をめぐる大きな転換点だったと言われるだろう。
10月初め、ハリウッドの大物映画プロデューサーのハービー・ワインスティーンが大勢の女優や従業員にセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)や性暴力を繰り返していたことが発覚。長い間沈黙していた女性たちの告発は米映画業界を、さらには国境を超えて世界的なうねりとなった。
「泣き寝入りせず声を上げよう」という意思の象徴となったのが、SNSのハッシュタグ「#MeToo」。始まりは女優アリッサ・ミラノが、セクハラや性暴力を受けた女性が「Me too(私も)」と書けば問題の重大さを皆に分かってもらえる、と呼び掛けたことだ。
日本ではまだ告発の嵐が吹き荒れる様子はない。アメリカなどと違い、俳優が社会的・政治的な発言をしにくいことも一因だろう。それでも、元厚生労働事務次官の村木厚子が就学前に性被害に遭ったことを語ったり、作家の森まゆみや中島京子が過去のセクハラ被害を告白したりと、#MeToo に自らを重ねる著名人が現れ始めた。
#MeToo 以前の5月、元TBS記者の山口敬之にレイプされたとして記者会見を開いた、ジャーナリストの伊藤詩織の存在も大きい。不起訴になったが逮捕が直前で取りやめられたこともあり、11月21日には捜査の在り方などを検証する国会議員の超党派の会が発足。世間の関心を集め続けている。
「私が沈黙したら同じような被害者がまた出てしまう」「大事な人たちを私と同じような目に遭わせたくない」と、伊藤は著書『ブラックボックス』などで語っているが、実名で名乗り出たのは彼女が初めてではない。司法書士事務所に勤めていた小林美佳は08年、著書『性犯罪被害にあうということ』を出版し、レイプ被害者の思いや周囲との葛藤などをつづった。
名前と顔を出した反響は大きく、予想以上に多くの人の気持ちを知り、伝えることの大切さを感じたと小林は言う。「でも、10年たっても実名での告発が騒がれるのには驚きもある」。日本ではセクハラや性暴力は個人の問題とされ、社会として取り組む機運が高まってこなかったということだろう。
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