エルサレム首都認定は米政権も説明できないトランプ究極の利己的パフォーマンス
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月7日 17時30分
今回の発表で、選挙公約を本気で実現するトランプの真摯さと信頼感をアピールできるとも、トランプ政権の関係者は主張した。まったくの見当違いだ。国際社会から見れば、トランプが公約に掲げたエルサレムへの米大使館移転は、もともとアメリカ国内向けの票稼ぎにしか映っていなかったからだ。
残念だが、トランプ政権は目の前にあったチャンスを逃した。一度限りの爆弾発表をして中東和平交渉の再開を不可能にするくらいなら、きちんとした手順を踏んでエルサレムをイスラエルの首都と認め、広範な和平プロセスの一環として大使館を移転することが、トランプにはできたはずだ。和平の条件とその範囲を提示し、和平交渉再開の土台にする方法もあった。イスラエルとパレスチナの双方がそれらを受け入れるよう説得していれば、和平実現に近づく大胆で有意義な一歩だったろう。その過程で大使館移転も実現できたはずだ。
双方の首都にもできた
具体的にはこうだ。まずどんな和平合意もイスラエルの国家安全保障上の懸念に配慮し、パレスチナ難民の大量流入を招く解決策にはしないと、和平条件に明記する。パレスチナに対しては、1967年の第3次中東戦争前にヨルダンとエジプトが支配していた領土を割譲し、その代わりにヨルダン川西岸のユダヤ人入植者が集中する土地をイスラエルに併合する「土地交換」で合意を図る。エルサレムは、パレスチナとイスラエル双方の首都だと認める。和平に向けた外交努力の一環として、アメリカはエルサレムを双方の首都として承認すると発表することもトランプにはできた。そうすればアメリカはエルサレムにイスラエル大使館を新設し、現在エルサレムにある米総領事館(これまではパレスチナ人向けの大使館のような役割を担ってきた)を在イスラエルの大使館に格上げできただろう。
こうした微妙なバランス感覚のあるアプローチを追求するどころか、トランプは火に油を注いでしまった。現時点で、誰も今後の見通しは分からない。クシュナーが準備を進めていた和平交渉再開が吹き飛ぶにしても、最良のシナリオは、数日間の抗議デモが終わった後、中東諸国の怒りの嵐が収まることだ。最悪のシナリオは、中東で新たな紛争の火の手が上がることだ。
© 2017, Slate
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>
イラン・ゴールデンバーグ
この記事に関連するニュース
-
トランプがユダヤ系富豪から巨額献金される事情 タブーを破って米大使館をエルサレム移転
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 16時0分
-
トランプもバイデンもイスラエルを支援する理由 聖書と冷戦が生んだ米国とイスラエルの同盟
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分
-
「力による平和」前面=同盟国に責任分担要求―共和党綱領・米大統領選
時事通信 / 2024年7月16日 14時24分
-
ガザ停戦枠組み「双方が同意」 米、イスラエルと温度差も
共同通信 / 2024年7月12日 18時28分
-
英新首相、2国家共存を訴え パレスチナ、2首脳と電話会談
共同通信 / 2024年7月8日 10時6分
ランキング
-
1百貨店で大規模火災 16人死亡 中国・四川省
日テレNEWS NNN / 2024年7月18日 10時25分
-
2焦点:戦争は「素人大統領」をどう変えたか、苦悩増すゼレンスキー氏
ロイター / 2024年7月18日 17時28分
-
3北朝鮮の地雷埋設、作業ミスで爆発事故多数、韓国側は脱北者の増加と雨による地雷流出を警戒
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月18日 16時37分
-
4トランプ氏は「神の手に守られた救世主」 暗殺未遂、個人崇拝に拍車
AFPBB News / 2024年7月17日 16時29分
-
5米「軍拡リスクを高める」 中国の軍備高官協議停止を非難
産経ニュース / 2024年7月18日 16時1分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)