北の対話路線転換と中国の狙い――米中代理心理戦争
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月4日 16時30分
金正恩氏は新年の辞で平昌五輪参加と南北対話再開に言及。3日には実行に移した。中国が唱える対話路線に沿っていると中国は喜び、米韓合同軍事演習と日本への牽制を示唆。南北朝鮮の背後で動く中国の狙いを読み解く。
金正恩氏が南北連絡チャンネル再会を指示
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、1月1日の「新年の辞」で、「核のボタンは私の机の上に常にある」としながらも、2月9日に韓国の平昌で開催される冬季五輪への参加や韓国との対話再開に言及した。
1月3日には朝鮮中央電視台(中央テレビ局)に朝鮮の祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソングォン)委員長が出演して、「3日午後から板門店の朝韓(北朝鮮と韓国)連絡チャンネルを再開通するよう、(金正恩委員長からの)指示があった。(北)朝鮮が平昌冬季五輪に参加することに関して話し合いを始める」と述べた。中国の中央テレビ局、CCTVが速報で報じた。
それによれば、李善権は、「(北)朝鮮側は、韓国側と平昌冬季五輪に関して話し合うため密接に交流を行なう。金正恩委員長は韓国の文在寅大統領が1日前(2日に)すぐさま呼応するように決定したことを高く評価した」と述べているとのこと。
実際、3日の午後3時半に板門店の軍事境界線にある電話で南北朝鮮は会話をしている。
韓国側は2日、(1月)9日に板門店の韓国側施設で南北ハイレベル当局者が会談を行うことを提案したが、それに先立って北が積極的に動いた形だ。
おまけに注目すべきは、文在寅を初めて「大統領」という敬称で読んだことである。
CCTV特集番組に透けて見える中国の狙い――「米中代理心理戦争」
CCTVでは長い時間を割いて特集番組を組み、これぞまさに中国が長年にわたって唱えてきた「双暫停(そうざんてい)」が実現されつつあると胸を張っている。これまで何度も書いてきたが、「双暫停」とは「北朝鮮とアメリカ双方が暫定的に軍事行動を停止し、対話のテーブルに着く」という意味だ。
中国としては、本来なら、アメリカに以下の二つのことを突き付けたい。
1.米韓合同軍事演習を中止せよ。
2.THAAD(サード、終末高高度防衛ミサイル)の韓国配備をやめよ。
しかしトランプ大統領と蜜月関係を保っていたい習近平国家主席としては、トランプと衝突するようなことはしたくない。したがって直接アメリカに対して要求を突き付けることができない。
そこで習近平政権は韓国と北朝鮮を使って、上記2項目を阻止することを試み始めた。言うならば、南北朝鮮に「米中代理心理戦争」をさせようという魂胆だ。
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