アッバス議長顧問「パレスチナ和平に日本も一役買ってほしい」
ニューズウィーク日本版 / 2018年2月15日 18時0分
<パレスチナ自治政府・アッバス議長のナビール・シャース顧問が語る、日本に期待するパレスチナの国家承認>
2週間ほど前、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長の顧問ナビール・シャース(国際関係担当)が日本を訪れていた。シャースは議長の特使として日本政府関係者と協議を行い、パレスチナ国家の承認を要請した。
シャースはアメリカの大学で学び、70年にパレスチナ解放機構(PLO)に参加。93年にイスラエルとパレスチナがパレスチナ暫定自治に関する「オスロ合意」を結んだ際は、合意文書の作成など重要な役割を果たした。94年に設立されたパレスチナ自治政府では、03~05年に外相を務めている。
そんなシャースに単独インタビューを行い、パレスチナと中東和平交渉の行方について話を聞いた。来日回数が21回に上り、寿司や刺身が大好きだという彼はおおらかでざっくばらん。「何を聞いてくれてもいいですよ」とさらっと周囲を気遣い、物腰も柔らかである。この人柄が交渉力の秘訣なのか。
***
――アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認定した問題では、昨年12月の国連総会でアメリカに撤回を求める決議案が採択されました。パレスチナ和平は世界各国から支持されているにもかかわらず、なぜ一向に進まないのだろうと思ってしまいます。その原因はどこにあるのでしょうか。
「絶対的権力は絶対的に腐敗する」という英歴史家ジョン・アクトンの名言は国家にだけでなく、今の世界情勢にも当てはまる。世界の権力構造は変化の節目にあり、アメリカ自身も薄々とそれを感じているはずです。かつてお友達のふりをしていたロシアもヨーロッパも、対等に世界を動かせる力がついてきました。世界を動かす力は分散化し、多元的な方向に向かっているということです。そのリーダー候補に名を連ねるのはロシアや中国、ヨーロッパ、それからインドや南アフリカ、ブラジルなど。もちろん日本もその候補の一つです。
この話をすると、みんなは信じてくれないが、経済や文化、軍事などと同様に権力もグローバル化の波に押されて多元化し始めています。もうアメリカの決定一つで世界が回るような時代ではありません。その証拠に、北朝鮮問題への対応やメキシコとの摩擦、ロシアや中国との接近などアメリカを取り巻く動きを見れば、いかにその求心力が低下しているかが分かります。アメリカ自身の混乱を示す最大の出来事は、ドナルド・トランプのような人物が大統領になったことです。アメリカはこれ以上ないほど困った状況にあるのでしょう。
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