金正恩氏、北京電撃訪問を読み解く──中国政府高官との徹夜の闘い
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月27日 8時58分
3月26日、金正恩氏が北京を電撃訪問したことが分かった。筆者は一日中、中国政府高官とはホットラインで確認を行なっていたが、夜9時頃判明。最大の後ろ盾である中国とよりを戻した上で、米朝会談を有利に持っていく計算だ。
「来了(来たよ)!」――中国政府高官と夜まで続いた確認作業
今月の20日前後に、中国外交部も北朝鮮担当者および中共中央対外聯絡部が北京にある北朝鮮大使館の人と会っていた事実は把握していた。
何かが起きるだろうと、必死でアンテナを張り巡らせた。
26日、2011年に金正恩の父親、故金正日総書記が最後に訪中した時に乗っていたのと同じ種類の列車が北京に着いていた。中国版ツイッターの微博(ウェイボー)が列車の姿を伝えていた。金正日のその旅は、北朝鮮の改革開放を模索する最後の旅だった。
もしかして金正恩委員長が乗っているのではないかと、中国政府高官に緊急連絡し情報を得ようとしたが、箝口令が布かれているので、今の段階では一切何も言えないという回答が戻ってきた。
それでも交通規制が外国の首脳級レベルだという情報だけはくれていた。
そのことで、何が起きているか、自分が何を言いたいかを察してくれと言わんばかりの具体的な知らせもくれた。
筆者は、「金正恩は結局のところ中国が長年唱えてきた『双暫停(米朝双方が暫定的に停止し、対話の席に着け)』という戦略に従ったわけだから、ここで北京と仲直りしてもおかしくはない。双暫停戦略を最初に教えてくれたのは、あなたではないか。それがようやく実ったのだから、次は金正恩が北京に挨拶に行くのが順当な流れだろう」と畳みかけた。
何度も往復書簡を「短信(ショートメッセージ)」で繰り返している内に、遂に決定的な二文字が携帯に飛び込んできた。
来了(ライラ)――!
「来たよ!」という意味だ。
この二文字が入ってきたのは26日の夜9時。北京時間の8時だ。
急いでコラムを書こうと、相手に許可を得ようとしたが「まだダメだ」という。発表する段階ではないからだとのこと。
金正恩なのか、それともその妹の金与正(キム・ヨジョン)なのかを確認するためのメッセージを出したが、それを最後にメッセージは途絶えた。寝てしまったのか。
個人的なことで恐縮だが、25日の夜は3時間しか寝ていない。そのまま徹夜をして公表の許可が出る時間まで待ったら、倒れてしまう。北京との時差は1時間なので、どうせ夜中はこれ以上変化を来さないだろうと諦めて、夜中の1時に就寝した。
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