ヘンリー王子の結婚で英王室は変わるのか
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月17日 18時0分
ただしイギリスで多いのは、ジャマイカやバングラデシュ、ナイジェリアよりもアメリカやオーストラリアからの移民だ。白人なら社会にとっての重荷とならず、好ましい存在と考えられてきた。第二次大戦以降も、イギリスの移民受け入れ策は一貫して人種差別的だった。直近の9年間は最悪で、保守党政権は新旧の非白人移民を敵視するような政策を打ち出している。
1953年のエリザベス2世戴冠式 Central Press/GETTY IMAGES
私はイギリスの植民地だったウガンダで生まれ、72年にイギリスのパスポートでこの国に来た。ところが、今や移民は侵入者扱いだ。昔から住んでいる私たちでさえ不安になり、嫌われていると感じている。
英王室のイメージ戦略の一環
より厄介なのは、今でも王室には異人種への悪意や偏見を抱いている人がいることだ。シェークスピアの祝賀イベントで、エリザベス女王の夫であるエディンバラ公フィリップ殿下は私の白人の夫に向き直って尋ねた。「彼女は本当にあなたの妻か?」
昨年12月の女王主催の昼食会にはマークルも出席していたが、ある王族の妻が人種差別的なモチーフのブローチを着けて現れた。今年4月にはヘンリーの父であるチャールズ皇太子が英連邦国民フォーラムで、インド系の両親を持つジャーナリストのアニタ・セティに出身地を尋ねた。「イギリスのマンチェスターです」と彼女が答えると、皇太子は「そんなふうに見えないね」と言った。
新夫のヘンリー自身はどうか。05年には仮装パーティーにナチスを模した格好で登場して物議を醸した。アフガニスタンで軍務に就いていた頃、「パキ(パキスタン人に対する蔑称)」「ラグヘッド(ターバン頭)」といった人種差別的な単語を口にする映像も残っている。
EU離脱を1年後に控えたイギリスにとっては、公正で世界に開かれた国というイメージを強調することが極めて重要になっている。王室も、その制度と富と地位を維持するためにイメージチェンジを必要としている。
今回の婚礼は絶好のチャンスだ。現代的で、異人種の両親の下に生まれ、ソーシャルメディアに精通しているマークルは、今のイギリスが必要とし、王室にとってはぜひとも利用したい天からの贈り物だ。
英王室の婚礼は全世界の注目を集める。ただし、そうした結婚の多くは幸せな結末を迎えなかった。なにしろ王室は家族ではない。会社だ。その固有の価値観と期待は、そこに加わる新参者を圧倒する。ダイアナ元妃は典型的な犠牲者だった。アンドルー王子の元妻セーラ・ファーガソンは屈辱的な扱いを受けた。マーガレット王女の夫とアン王女の最初の夫も去った。
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