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元CIA諜報員が明かす、ロシアに取り込まれたトランプと日本の命運

ニューズウィーク日本版 / 2018年5月23日 18時30分

私が記事を書けば、党派的な人間だと非難を受けるに違いないと思いました。共和党あるいはトランプに敵対的なオバマ支持者と決めつけられるに違いない、と。私はオバマに投票しましたが、しかし私の評価や反応は党派的なものではありませんでした。私は書く記事が受け入れられるようにするためには、非難を受けないためにはどうしたらいいか考えました。そこで私は戯画化した、非常に皮肉な視点で記事を書くことを思いつきました。ロシアの諜報工作員になりきって、ロシアの本部に「自分はトランプのこういう弱みを把握しているのだが、どう利用したらいいか?」と聞いて本部の指示を待つ、という書き方です。それでも私は心配だったので、雑誌に記事を送る前に同僚に送って反応を見ました。この同僚の名前は伏せますが、いろいろな国とコネクションを持っている人物です。

通常、彼と電話で話すことは一切なく、Eメールだけで済ませるのですが、この人は翌朝すぐに電話をかけてきて、「君は気が付いていないかもしれないが、記事は事実をとらえた、的を射たものだ」と話してくれました。確か2016年の1月のことだったと記憶しています。彼はヨーロッパのさまざまな国の諜報機関と常にコンタクトを取っている人間ですが、フランス、イギリス、ドイツ、オランダそしてバルト諸国の一国の諜報機関から、それぞれ報告が届いている、と。ロシアの諜報機関の工作員がトランプの取り巻きや家族、そしてトランプ自身ともモスクワで接触している。そういう情報が続々入っている、ということを話してくれたんです。

私自身もCIAに所属していたころは何百人、何千人という人間と接触してきました。相手は私が諜報機関の人間と気付いていない、ということも多々ありました。ある人間がCIAやKGB、FSBの職員と会ったからと言って、意識的に協力するつもりがない、ということもあると思います。しかし、工作員の側は目的を持っています。でなければ接触をしてこない。ヨーロッパ各国の諜報機関からどんどん情報が入って来る。記録に取られただけで400回以上、名前を知られたロシアの諜報機関の人間や関係者がトランプの取り巻きや家族、トランプ自身と会っているという事実が浮かび上がって来たのです。統計的な確率から言って、それだけの回数がたまたま偶然あるいは無意識に、ということはありえません。



その後、いわゆる「スティール文書」が公開されました。この人(編集部注:MI6〔英国情報部国外部門〕元職員のクリストファー・スティール)は英国の諜報機関にいた人で直接は知らないが、いろいろな人に聞いた評判だと完璧な人間、ということです。その報告書の中に私自身が認識し、聞いた情報が書かれていたのです。私自身がそういったことを知るようになったのは2016年の1月ですが、この文書が公開されたのは10月でした。ところが、この文章が出てもトランプの支持者や共和党は一貫して「うわさに過ぎない」「不公正な攻撃だ」と言い続けていたわけです。しかしその後、その文章に書かれていたことが1つ、また1つと裏付けられました。どの点を取り上げても反駁の余地がないほど裏付けられているのです。

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