元CIA諜報員が明かす、ロシアに取り込まれたトランプと日本の命運
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月23日 18時30分
ロシアもまさにそういうことをやったわけです。「トランプとは確かに何度も接触しているが、しかし合法的だ。中傷されることは一切していない」と開き直ったわけです。一度は国民も疑問を持ったと思いますが、堂々と言われてしまうと納得してしまう、それ以上しつこく分析しないという風潮にどんどん進んでいったのです。一部だけ真実を語れば堂々と出来る。そういうことをずっとやって来たのです。
それではトマトの有機栽培に関する質問でも何でもお答えします(笑)。
<(杉田)カールさん、ありがとうございます。非常に生々しいお話で、ジョン・ル・カレの小説の世界そのものですね。それでは質疑に移りますが、私から一問だけ。ロシアとの接触やモスクワにおけるトランプ本人と工作員の接触など今日はいろいろなことが語られましたが、(ロバート・ムラー)特別検察官の捜査および報告書が出た後、アメリカの世論や政治状況を考慮したうえで、どういう風にロシア・ゲートが展開していくのか。決定的なトランプ陣営とロシア側の共謀(を示す証拠)が出て、トランプが大変な窮地に陥り弾劾という方向に進むのか。いろいろな政治状況を考えるとそこまでは行かないのか。>
次のようにお答えしたいと思います。この2年半、私は何度もインタビューを受けてきましたが、そのたびにアメリカの読者、聴取者に警鐘を鳴らすため、同じ表現を使ってきました。私が見るところ、アメリカは制度、政府、体制、民主主義、社会に1861年以来の最も大きな打撃を受けようとしています。1861年はアメリカが真っ二つに割れて、4年間の南北戦争に陥ったその年でした。
法律上の定義はさておき、諜報機関にいた人間から見るならば共謀は明らかです。意図しているかいないかに関わらず、外国の諜報機関の人間と関わり合ったということ。諜報機関というのは相手の国の国益でなくあくまで自分の国の国益だけを考えて動きますから。ムラー特別検察官がすでに立証済みで結論も出ていると思いますが、共謀の事実は圧倒的に真実です。しかし、そうなった場合にさらに大きな危機が生まれることを懸念しています。というのは、議会の共和党指導層は大統領としてのトランプは何が何でも守る、と態度を決めているからです。特別検察官が何を言おうとほとんど無力、ということになる。行政府と議会が結託すれば、特別検察官が何を言おうと死文化してしまうということです。これは未曽有のことで、行政府と議会がそこまでいけば、法律も国家の安全保障も重大な形で損なわれることになりかねない。歴史的な危機です。
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