ドル箱女優も即クビ、SNS時代の容赦ない危機管理
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月1日 18時48分
<主演女優のたった2行の差別ツイートがもとで、全米視聴率トップのコメディドラマが打ち切りになった。その間、わずか数時間。放送をしていたABCテレビも親会社のディズニーもあっという間の決断だった。ソーシャルメディアが世論を増幅し「審判」を下す今の時代、判断の遅れは許されないからだ。本稿の筆者は、ABCのこの成功例に企業は学ぶべきだと言う>
米ABCテレビは5月29日、人気コメディードラマ「ロザンヌ」の新シリーズの放送打ち切りを発表した。ソーシャルメディアによってあっと言う間に世論が形成される時代の素早く賢明な判断だった。企業が生き残るための教訓がここにある。
打ち切りの原因は、主演女優のロザンヌ・バーがツイッターに人種差別的な投稿をしたこと(下図参照)。ツイッターはたちまち炎上し、広告主にボイコットの動きも出たことから、ABCは視聴率トップのドル箱だったこの番組を惜しげもなく打ち切った。差別的なツイートが出てから、わずか数時間後。投稿はすでに削除され、バーは謝罪もしていたが遅かった。30年前にバーを大スターにしたオリジナル版の「ロザンヌ」の再放送までが、軒並み打ち切られた。
問題のツイート。「(オバマの側近で黒人の)バレリー・ジャレット(vj)は、ムスリム同胞団と「猿の惑星」の落とし子だ」とある。
ABCの素早い決断は周囲に衝撃を与えたが、今回の事件は、米ユナイテッド航空や米配車サービス大手ウーバーが昨年犯した危機管理の失敗から、他の企業が教訓を学んだことの表れだ。少し前なら表沙汰にならなかったような事件も、今や息を呑むスピードで世論を左右する。不祥事が発覚した途端、その企業や団体には非難が殺到し、そこで誤った対応をすれば命取りになりかねない。
筆者の研究が示す通り、ソーシャルメディアは不祥事を質量共に増幅する。あっと言う間に多くの人の知るところになり、関心あるユーザーはいくらでも関連情報を集めることができる。それが今、企業が直面する課題だ。
劇的な変化
市民運動は、ソーシャルメディア時代になって根本的に変化した。
ユナイテッド航空は昨年4月、オーバーブッキングのため別のフライトに変更してくれるよう頼んだ乗客が拒否したため、航空治安当局を呼んで無理やり引きずり出させる阿鼻叫喚の動画が、ソーシャルメディアでたちまち拡散した。ユナイテッド航空の株価は急落し、CEOが2度謝罪し、その便の乗客全員に運賃が払い戻された。
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