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モーリー・ロバートソン解説:「中華帝国」復興の設計図

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月17日 18時0分

さらに中国は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの中華系メディアに入り込むために「並々ならぬ努力」(報告書)をしている。以前はこうした中華系メディアには台湾資本が広告を掲載していたこともあって民主的な内容だったんですけど、全部淘汰されて中国政府寄りの内容になっている。

また、オーストラリアでは地元に暮らす中国人や台湾人の言動をも監視し、現地の華僑も中国共産党への反対意見を口にできない環境を整えようとしています。まさにアクティブ・メジャーズですよ。ニュージーランドは小さな国であり、中華コミュニティーもアメリカやオーストラリアと比べて小さいので中国は実験的にやっているのでしょう。むき出しの覇権主義......。「終身国家主席」習近平(シー・チンピン)による「国境なき言論統制」に屈服してはいけない!



一帯一路の「通過国」スリランカで進む中国資本による港湾事業 ATUL LOKE-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

問題は、こうした中国の作戦にトランプ政権が「役立って」しまっていること。ドナルド・トランプ米大統領の言動や振る舞いが世界に対して「アメリカは自国優先で、大国の威厳がもはやない。没落している」との印象を与えると、小さな国はリスクヘッジとして中国と仲良くしておくかという考えになってしまう。アメリカがクラッシュしたときに道連れにならないように、というふうに。

――世界に中国思想が流れている。

全世界にいる華僑って全部合わせると数千万人くらいいるのでしょうかね。彼らへの知的な戦略で、どんどん中国政府寄りの考え、あるいは民族ナショナリズムを広めようとしていますね。世界中で成功した華僑の大半が、中国共産党が提供する「中華帝国の復興」という物語に乗ってしまえば、中国政府のソフトパワーも加速できます。

アメリカの将来については「ポスト人種・民族の時代」になるという話をしましたが、中国は全く逆の民族主義でアンチ多様性。多民族が何千年もの間まざり続けてきたなかで今は漢族だけが力を持っている。ウイグルやチベットなどの少数民族は経済的にも民族的にも言語でも弾圧されており事実上の「アパルトヘイト体制」にある。

中国政府は国民を監視し、民主主義や人権を抑圧して支配を一律にするためにAI(人工知能)やロボット技術開発を進めている。中国全土には2億台近い監視カメラが配置されているのですが、特にウイグル人に対する監視手法はひどくて公衆衛生プログラムの名の下に中国政府からDNAを採取されているんですね。いわば人体実験によって生物情報データベースが作られているわけで、映画『ブレードランナー』みたいな世界ですよ。

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