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『新潮45』休刊の背景──貧すれば鈍する名門雑誌の最期

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月28日 16時0分

しかし、「右傾化」後発の『新潮45』は、雑誌の「前半分」しかネット右翼迎合の内容にすることが出来ない宿命を背負っていた。なぜなら既に述べたとおり、創刊時からの穏健な讀物や漫画に期待する読者が一定数いるので、雑誌の前半分しか「ネット右翼迎合」に改造できないのである。ここに『新潮45』が、前半は過激なネット右翼路線、後半は穏健な讀物と連載陣で固める、という奇妙な『二重構造』を有した原因であると私は観る。

『新潮45』実際の部数減はどの程度だったのか

さて、『新潮45』の部数減の焦りが本誌前半の過激なネット右翼迎合記事を醸成させたとして、はたして『新潮45』の部数減は実際にどの程度だったのだろうか。実のところ確固とした数字がある。一般社団法人日本雑誌協会の統計によって、『新潮45』の過去10年に亘る部数の増減を観ていくことにしよう。



上図を観ても分かるとおり、約10年前の2008年4~6月期に43,000部弱を誇った『新潮45』の印刷部数は、2012年には25,000部の大台を割り込み、以後ほぼ回復すること無く、2016年10~12月期には20,000部すら割り込み、最新統計では16,800部に低迷した。よって過去約10年間で印刷部数は実に6割以上減少、という断頭台に立たされたのである。



ふつう、固有の戦力の6割が灰燼に帰した場合、その部隊は全滅と判定される。言い換えれば『新潮45』は、ここ10年でその戦力の2/3近くを喪失したのだ。『新潮45』のここ10年の歩みはまさにこのような壮絶な「生きるか死ぬか」の瀬戸際にあったのだ。

注意して欲しいのは、これは印刷部数であって実売部数(実際に書店やネットで売れた数)ではないということだ。冒頭の報道のように該雑誌が実売1万部であるとすれば、この印刷部数に0.6の係数をかけなければならない。だから、実際の部数はもっと低落する。

このような中で、『新潮45』は、「たとえどんなことをやろうとも、たとえどんな手を使ってでも、一部でも多く売る」ことを至上命題にして、炎上覚悟、右傾化路線、ネット右翼迎合路線に突き進んでいった。

全滅寸前でも右傾雑誌になりきれず・・・

しかし前述の『二重構造』が災いして、徹頭徹尾右傾雑誌になることは出来ず、『正論』(産経新聞社)、『WILL』(WAC)、『HANADA』(飛鳥新社)の「自称保守雑誌三巨頭」の読者を根底で奪うところまではいかなかった、といのが私の読みである。

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