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本土に伝わらない沖縄の本音と分断

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月28日 19時0分

「なんで今日このイベントに来たの?」
「いや、おじーおばーがあんなに一生懸命反対しているから、理由を知りたかった」
「基地ができた歴史とか、辺野古に新しい基地を造ろうとしている経緯を知らないの?」
「全然分からない」



沖縄が分断されていく予感がした。ふるさとの歴史を知っているか、そうでないか。情報源が地元のマスメディアか、ネットか。基地があることに賛成か、反対か。さまざまな事象が錯綜している。

ただ、これらは沖縄において、基地のことをリアルな場で語りにくい現実にも起因している。

基地が語られない背景

「オスプレイが普天間飛行場に配備されたことについて、感想を聞かせてください」

基地問題に関連する政治的な出来事や事件事故が起きたとき、新聞では市民の声をまとめることがある。そんなときは、街に立って片っ端から声を掛ける。突然話し掛けられたことへの驚きもあるだろうが、「基地問題」という言葉への反応は良くない。

「あんたたちのせいで、普天間は返されない」と言ってくる人もいる。熱心に反対運動をしている人を除いて、3~4時間声を掛けても誰も話してくれないのはザラだ。

沖縄には公に名前を出し、顔を出して基地問題を語りにくい理由がある。

1つは、普天間飛行場の移設問題のニュースが込み入っていることだ。例えば、辺野古への新基地建設をめぐって国、沖縄県、市民らが起こしていた訴訟は15年12月には5件あった。連日、複数の訴訟が同時に報道されるため、正直、記者である私も全てを理解して追い掛けることがやっとの状況だった。著名な法律家が「実は、辺野古関連でいくつ訴訟をやっているのか分からない」と、こっそり漏らしたこともあった。

かなり高度な内容に、地元の友人は「恥ずかしいけど、難し過ぎてついていけない。自分が知っていることが正しいのか分からないから、話し切れない」。沖縄で活躍するライターも「難易度が高過ぎて扱い切れない」と吐露した。

もう1つは家族間や親戚間でも意見が割れてしまうことだ。普天間飛行場を早く辺野古に移設し、経済の問題に注力すべきだという人もいる。県内への移設は固定化につながると考えて反対する人もいる。当初は辺野古への移設に反対だったが、96年に普天間飛行場の返還が合意されて20年以上も実現しない現状に、もう辺野古に移設したほうがいいと考える人もいる。それぞれの思いを熱く語ってしまえば、ケンカにもなる。人間関係が壊れてしまった人もいる。だから、口は重い。

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