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本土に伝わらない沖縄の本音と分断

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月28日 19時0分

でも東京では、沖縄出身だと言うと羨ましがられた。聞かれるのは、観光スポットやホテルの情報、沖縄出身の芸能人のこと。「基地のことはいいの?」と聞くと、「あんまり分からない」「難しいんで」。彼らは基地問題にはあまり関心がなく、ネットの発言が荒れているのは、一部の人たちによるものなのだと分かった。



東京は、沖縄で話しにくかった基地の話をしやすい環境でもあった。同郷の友達と飲みに行ったとき、初めて基地の話をした。客観的に地元を見られることと、「空気」の力が働かないことにあるのだろう。「沖縄で話せなかったね」と笑った。

本土のメディアの人たちに会う機会があると「今度、辺野古のゲート前でインタビューしてきます」「沖縄の人たちがあんなにも反対しているのに、国のやり方はひどい」と言われる一方で、「沖縄の報道は偏り過ぎている」と批判を受けることもあった。

18年2月の名護市長選では、直前の世論調査で市民の3分の2が辺野古新基地に反対していた。東京で建設反対の現職市長が勝利するのだろうと動向を追っていたら、結果は逆だった。

メディアで働くと、どうしても最前線の現場に行きたいし、沖縄のこれまでの歴史を知り、基地への意見を明確に発言してくれる人と会いたくなる。結果、そうした声の報道が多くなる。

だが、揺れる心をうまく説明できない県民もいる。「新聞はウソだ」とネットを信じる若者もいる。政府の強硬な態度に諦めてしまう人もいる。

こういった声も時折、新聞紙面では紹介している。全ての記事をネットで公開しているわけではないから、ネットだけを見ていると一部に偏って見えるのかもしれない。

数字では測り切れない複雑な心のひだが、県民一人一人にある。沖縄の本音は一体、どこにあるのだろう。いつも、虚構を生きているような気がしてならない。

<本誌2018年10月02日号[最新号]掲載>



與那覇里子(沖縄タイムス記者)


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