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カショギ殺害を裁けないサウジ司法

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月27日 16時30分

<絶大な権力を持つムハンマド皇太子の知らないところで、このような事件が起きることはありえないが......>

サウジアラビアの検察当局は、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害に関与したとして11人を起訴、うち5人に死刑を求刑した。サウジアラビア政府に批判的だったカショギは10月2日、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館を訪れた際に殺害された。

専門家に言わせれば、サウジアラビアで絶大な権力を持つムハンマド皇太子の知らないところで、このような事件が起きることはあり得ない。

しかしサウジアラビア指導部は、皇太子が殺害計画を事前に知っていた事実はないと主張し、ほかの人間に責任を負わせることにした。死刑を求刑された5人の名前は公表されていないが、殺害への関与を指摘されている高官が数人いるとみられる。

1人は、サウジアラビア王室の顧問だったサウド・カハタニ。ムハンマドの長年にわたる側近として知られており、皇太子のスポークスマン役としてソーシャルメディアや報道機関を通じてサウジアラビア政府の主張を発信してきた。部下であるマヘル・ムトレブに、カショギ殺害を指示したとされている。

ムトレブは情報機関の高官で、ムハンマドの警護チームの一員でもあった。サウジアラビア政府関係者によれば、イスタンブール総領事館の現場で殺害を指揮したのがムトレブだという。

サラー・トゥバイギは、サウジアラビア内務省の法医学専門家。カショギが殺害されたときにトルコ入りしていた1人だ。総領事館での証拠隠滅を行ったとされている。

ムスタファ・マダニは、カショギを殺害するためにイスタンブールに入った15人の情報機関チームのリーダーだったとされている。カショギの衣服や眼鏡を身に着けて総領事館の建物を出ていく偽装工作を行った人物とも言われている。

専門家によれば、死刑を求刑された5人が実際に処刑される可能性は低い。「サウジアラビアの裁判所と検察には独立性がない......この事件の政治性を考えると、王室の意向に沿った判断が下されるだろう」と、湾岸問題研究所(ワシントン)のアリ・アハメド所長は言う。

カショギに対する非道な行為へのまっとうな裁きが行われる可能性は、限りなくゼロに近そうだ。

<本誌2018年11月27日号掲載>



※11月27日号(11月20日発売)は「東京五輪を襲う中国ダークウェブ」特集。無防備な日本を狙う中国のサイバー攻撃が、ネットの奥深くで既に始まっている。彼らの「五輪ハッキング計画」の狙いから、中国政府のサイバー戦術の変化、ロシアのサイバー犯罪ビジネスまで、日本に忍び寄る危機をレポート。


クリスティナ・マザ

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