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米中対立はむしろ「熱戦」

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月28日 11時0分

複雑に食い込んでいる米中の投資

彼らはみな米企業の対中投資をする際にアドバイスを与えながら、中国でのビジネス展開を支援し、中国企業の対米投資をも支援する。

中国にいる在米企業が、もし中国政府によって締め出されたら、アメリカ経済は崩壊に近いほど減衰する危険性を孕んでいる。だからトランプ政権は中国に対して思い切り強硬に出たくても出られない。

筆者は1990年代初期から在米の華人華僑を取材し続けてきたが、彼らは意図的にその複雑さを深めることにより、米中が戦争できないようにしているのだと言っている。

あらゆる面から米中両国は複雑に絡まっているのであり、ただ単に米中二大国が対立し、その対立がしばらくは続くということを以て、「新冷戦」などという言葉で、現在の米中関係を位置づけることは、現状の把握を誤らせる。

金融あるいは投資は、グローバルな世界で動いている。金融工学という学問にしても、実は米ソ冷戦構造の消滅によってニーズが少なくなったロケット工学などに使われる物理学の流体力学が応用されたことにより補強されたという側面を持つ。流動的なダイナミズムを持っているのだ。



だから、トランプ政権は中国の米企業買収や米企業への投資を阻止したいと思っても、一直線に中国をターゲットにした強硬な対抗法案を決議することができず、やむなくCFIUSを介して迂回しなければならなかった。

グローバルなつながりが絡み合い、複雑な「作用・反作用」の原理が動く中で、もし「○○戦」という単語を使いたいのなら、むしろ「熱戦」と言うべきで、米ソ対立時代になぞらえた「新しい冷戦」という概念を用いてしまった瞬間に、米中の実態を見失う。

困り果てたアップル

その証拠の一つに、中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げたときのアップルの困惑がある。

アップル製品の多くは台湾企業を通して、中国大陸で製造している。受託しているのは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だが、鴻海が中国大陸に持つ生産拠点で製造している。賃金が安いからではない。大陸には膨大な数のエンジニアという「人材」がいるからだ。

いま米中対立の根幹になっている「中国製造2025」が発布された原因の一つも、実はこの事実と深く関係している。

たとえば、一台のiPhoneの利潤に関しては、理念設計側のアップルが80ドルほどを儲け、中の構成要素である半導体などのキー・パーツを製造する日本企業は20ドルほどを稼ぎ、そして組立作業しかやっていなかった中国は、ほんの数ドルしか稼ぐことができない。これが2012年9月の反日デモのときに若者の不満として噴き出した。

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