剛腕ゴーンが落ちた「コンプライアンス・クーデター」の闇
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月29日 16時40分
退職金を含めて、役員報酬として300億円を超える巨額の金銭を短期間で手にしたアローラ退任の経緯については、今年になってソフトバンクが特別調査委員会を設置して再検証を開始したが、利益相反の疑惑追及が社内関係者の内部告発によるものだった可能性がある。そうだとすれば、これも一種のコンプライアンス・クーデターだったと言える。
虚偽の自白を生むリスク
今回の事件は、司法取引を前提としたコンプライアンス・クーデターが今後、日本で本格化する可能性を示している。コンプライアンスには誰も正面から異議を唱えられないからだ。
17年には米ウーバーの創業者トラビス・カラニックCEOが、セクハラなどのコンプライアンス違反の管理責任を問われ辞任に追い込まれたことは記憶に新しい。CEO自身ではなく、部下のセクハラなどのコンプライアンス違反の管理責任を問われたという「間接型」だが、コントロールが難しかったじゃじゃ馬CEOを投資家が追い落としたという点ではクーデターだ。
しかし、企業のコンプライアンス違反を口実とした「クーデター」には、捜査機関との司法取引で都合の良い虚偽の自白が行われるリスクもある。日本企業はこの「両刃の剣」を使いこなせるのだろうか。
<本誌2018年12月4日号掲載>
※12月4日号(11月27日発売)は「インターネットを超えるブロックチェーン」特集。ビットコインを生んだブロックチェーン技術は、仮想通貨だけにとどまるものではない。大企業や各国政府も採用を始め、データ記録方法の大革命が始まっているが、一体どんな影響を世界にもたらすのか。革新的技術の「これまで」と「これから」に迫った。
北島純(経営倫理実践研究センター主任研究員)
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