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「人生100年時代」の暮らし方──どう過ごす?! 定年後の「10万時間」

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月10日 15時0分

「定年」とは、『官庁や企業などで退官・退職する決まりになっている一定の年齢』(新明解国語辞典)とある。一般的には「定年退職」という言葉が使われることが多いが、その理由は、これまで多くの人が終身雇用制のもと同一企業で働き、「定年」を迎えることはすなわち「退職」を意味したからだろう。しかし、今日では定年後も嘱託で雇用を継続したり、あらたに個人事業主になって働いたりする人も増えており、必ずしも「定年」=「退職」とは限らないのである。

人生100年時代の生涯現役社会では、多くの人にとって、「定年」が「退職」を意味するのではなく、年齢の定めのないあらたな仕事への船出になるのかもしれない。政府には、同一企業での定年や雇用の延長だけでなく、定年後に個人が自らの能力を十分に活かせるような「雇われない」働き方が柔軟にできる就業環境の整備が求められる。長寿化した人生において定年はひとつの通過点であり、あらたな社会との関係性を構築する好機でもあるのだ。



3―定年後の居場所

  ◇◇◇

1|「終活」と「就活」

人生の最期に備える「終活」がブームだ。大型書店にはエンディングノートのコーナーがある。葬式、墓、遺産相続、生命保険など死後に対処が必要な項目を整理したり、生前の遺影撮影、認知症など介護への対応、延命治療の要否を考えたりするなど、さまざまな終活内容が記載できる。終活とは、葬儀や相続など人生の最期を迎えるための準備であるとともに、人生を前向きに生きるための「老い支度」でもあるのだ。

「終活」ブームの背景には、一人暮らしが増え、死後に回りの人に迷惑をかけたくないという「ひとり社会」のニーズがある。一方、家族構成にかかわらず、自分が生きてきた証を残したい人も少なくない。「終活」は死後をどうするのかというエンディングにとどまらず、ポジティブに人生の最期までをどう生きるのかというウェル・エイジングの意味を持つ。

高齢期をよく「生きる」とは、自分自身が社会でよく活かされることだ。最期まで活き活きと暮らすには社会との関係性を維持することが重要であり、何らかの社会的役割をデザインすることが必要だ。自分を社会のなかでよく活かすための「老い支度」は、定年後に社会におけるあらたな役割を獲得する第2の「就活」でもあるのだ。

だれもが会社に入るときには熱心に就活するが、生涯実労働時間にも匹敵する定年後を暮らす地域社会への就活には無関心な人が多い。人生100年時代が近づく今では、定年後の「10万時間」はもはや「余生」ではない。余生を活かすためのあらたな地域社会への就活は、きわめて重要なライフイベントと言っても過言ではないだろう。

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