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「日本人と挨拶」を文化論的に考える

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月12日 17時40分

例えばミャンマー人では、「今は連絡をとっていない過去の友人」と道端ですれ違ったとき、挨拶をすると全員が答えたのに対し、日本人ではしないと答えた人の方が多かった。一方で、「今も連絡をとっている友人」に対しては、全員が挨拶をすると答えている。日本人は現在の関係性を重視しているのだろう。ミャンマー人は、相手が自分のことを確実に認識している状態であれば、必ず自分から挨拶をすると言える。

また、日本人は仕事とプライベートをきっちり分けたいという考え方を持っていたり、親しくない相手に個人的な情報を公開したくないという考えを持ったりしていることが分かった。そのことは日本人の挨拶行動に大きく影響していると考えられる。小規模な調査ではあるが、全体を通してみると、外国人の方が自分から挨拶をする確率が高いと言える。

挨拶とは何かということへの認識は外国人と日本人で大きくは変わらないように思える。しかし日本人は、挨拶は「できて当たり前」としつつ、「一度話をしただけの職場の人には挨拶をしない」と答えているところなどを見ると、挨拶の捉え方と実際の行動との矛盾が感じられると言わざるを言えない。この点については、日本人は学校や職場の新人研修など教育の場で、「しっかり挨拶するように」と理想論ばかりを教え込まれ、実際にはそれを幼少時から体験していないと言えるのではないか。つまり、大人や先輩が教育的に指導するだけで、実際の社会生活や家庭生活の中では、きちんと挨拶が行われていないのではないか(田村氏)。このような状況が、日本人の「必要最小限」の挨拶行動を作り出しているのかもしれない。

一方、アラブ人は三度の飯よりおしゃべりが好きな民族である。そのため挨拶を交わす際にも、慌てず急がず、そして丁寧に相手の健康、家族、仕事など一つひとつについて「~はどうですか」と尋ねるのが大事な礼儀となっている。「アッサラーム アライクム」というアラブ世界の代表的な挨拶は「あなたに平和を」という意味の言葉だが、これは道端でもどこでも、出会ったどんな人とでも交わす基本的な挨拶の言葉。しかし大抵の場合、このひと言では終わらない。



「宗教とは周りとどう接するかということそのもの」と考えるイスラム教の聖書であるコーランは、「あなたがたが挨拶された時は、更にそれより良い(丁重)な挨拶をするか,または同様の挨拶を返せ(Sorah An-Nisa ( The Women ) - Verses No.86)」と挨拶の大切さを伝えている。また、「人(同胞)に微笑むこそ、善徳なり」と言葉だけでなく、身体動作を含む挨拶が人間関係や平和な社会作りにとって重要であると諭している。

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