全人代「中国の国防費」は脅威か──狙いは台湾統一
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月13日 13時0分
今年の中国の国防費は7.5%増(約20兆円)となった。来年の台湾総統選に備え、独立派を抑制する狙いがあるが、アメリカの軍事力には及ばない。中国の言い分と脅威の程度、そして日本の取るべき姿勢を考察する。
中国の言い分
3月5日午前、李克強首相による政府活動報告が終わると、午後からは全人代(全国人民代表大会)に提出された2019年の予算審議が始まった。その予算案によれば、今年の国防費は1兆1898億元(19兆8,500億円。約20兆円)で、前年比7.5%増となる。昨年の8.1%増よりも下回る。
これに関して全人代のスポークスマンである張業遂報道官は、以下のように述べている。
──中国の国防費を縦軸で見ると、2016年までは5年連続の2桁台の成長だったが、2016年以降は1桁台に下がっている。横軸で比較するならば、中国の国防費の対GDP比は昨年約1.3%で、同期の一部の先進国は2%以上だった(引用はここまで)。
張報道官が言うところの縦軸というのは、中国自身の国内における定点推移という時間的変化のことで、横軸というのは、時間を止めたときの国際社会における比較のことを指す。
たしかにスウェーデンのストックホルム国際平和研究所が昨年(2018年に)まとめたデータによれば、2017年における軍事費規模世界トップ10の軍事費の対GDP比(%)の平均は約3%で、2017年の中国のGDP比(1.9%)は、世界平均よりも下回っている。同様に、2018年における「一部の先進国」では、たしかに2%を超えており、中国はGDP規模が大きい(分母が大きい)分だけ、「GDP比」となると今年は「1.3%」と、かなり小さくなっているのは事実だ。
中国では、3月15日まで全人代が開催されているので、毎日のように中央テレビ局CCTVで全人代のための特別番組を組んでいる。現状を紹介し、記者会見なども踏まえながら、3月11日(再放送かもしれない)、国防費に関して女性の解説委員が次のように言っていたのが印象に残った。
すなわち、「世界は中国の国防費の増加に関して異様なほどの強い関心を持っているようですが、実際、世界トップ10の国防費の規模を考えてみてください。トップのアメリカ1ヵ国だけの金額が、残り9ヵ国すべての軍事費の合計と同じか、時にはそれよりも大きいんですよ」と、やや自嘲気味に解説したのだ。
調べてみると、ストックホルム国際平和研究所の2018年データ(2017年の集計)によれば、たしかにアメリカ1ヵ国で6100億ドルで、アメリカを除く世界トップ10の内の残り9ヵ国の国防費総計は6615ドルと、ほぼ6100億ドルに近いと言えば近い。
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