全人代「中国の国防費」は脅威か──狙いは台湾統一
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月13日 13時0分
法外な昨年のアメリカ国防予算
解説委員は続けて、アメリカの「2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の国防予算」が如何に法外なほど高額なものであるかに関して解説を始めた。
「アメリカの国防費は7160億ドルで、過去9年で最大規模になりました。それに対して中国の国防予算は、わずか1776億ドルに過ぎません。アメリカの4分の1でしかない。だというのに、特に日本などは何を騒ぐのでしょうか」と強調した(7160億ドルは約78兆円)。
たしかに3月4日、全人代開幕前に全人代の張業遂報道官が記者会見を行なった時、ブルームバーグの記者が「中国の国防費が拡大を続けている。アジア太平洋の一部の国は、これが脅威になるとし懸念している。それから日本などの国は、中国の軍事費の透明度について懸念を示した」と切り出しながら質問している。日本語に翻訳されたページ<全人代報道官、中国の軍事費に関する日本などの懸念にコメント>があるので、こちらでご確認いただきたい。
なぜブルームバーグの記者が日本に関する例を挙げながら質問したのか、やや奇異にも思うが、アメリカの新聞記者にも、中国の軍事費に対する日本の世論が際立って見えたのだろう。
解説委員は続けた。
「おまけにアメリカは、『一つの中国』という大原則を侵して、国防権限法に台湾への武器供与を強化する方針を盛り込んでいる。これは米中国交を正常化したときの約束に違反します!」と語気を荒げた。
建国70周年記念と台湾統一
中国の最大の関心事は、まさにここにある。
特に今年は中国(中華人民共和国)建国70周年記念だ。
1月6日付のコラム<「平和統一」か「武力統一」か:習近平「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念講話>で書いたように、習近平国家主席は今年1月2日、「台湾同胞に告ぐ書」発表40周年記念で講話し、2020年の台湾総統選に向けて「一国二制度」による平和統一を選択しない限り、武力統一もあり得ると脅した。武力統一というのは胡錦濤政権時代の2005年に全人代で採決された「反国家分裂法」を指す。
「台湾同胞に告ぐ書」は改革開放を宣言した翌年の1979年1月1日にトウ小平が発表したもので、その日はちょうど、米中国交正常化が正式に成立した日でもあった。
そのアメリカが、今では中国(大陸)に敵対し、台湾を応援しようとしている。そのことに対する中国の対米警戒心は尋常ではない。
来年には台湾総統選がある。
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