全人代「中国の国防費」は脅威か──狙いは台湾統一
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月13日 13時0分
それでも中国の国防費が脅威なのか?
もし、中国の国防費が日本にとって脅威だというのなら、せめて蔡英文の切なる願いを温かく叶えてあげるような対応をしてほしい。アメリカには出来て、日本には出来ない理由はどこにあるのか?
日本は第二次世界大戦における敗戦国だからなのか?
だから、いつまでも中国の顔色を窺いながらでないと行動できないのか?
それとも、経済的に強くなった中国には、平身低頭していないと、日本の経済が成り立たないと思っているからなのか?
中国を経済大国にのし上がらせたのは日本だ。
1989年6月4日の天安門事件で経済封鎖をした西側諸国の制裁を最初に破ったのは日本であり、1992年10月には天皇訪中まで実現させて、日本は中国に経済繁栄のきっかけを作ってあげた。あの時も中国はまず日本の経済界を動かした。
そして今、3月11日付のコラム<全人代「日本の一帯一路協力」で欧州への5G 効果も狙う>に書いたように、アメリカを追い抜こうとしている中国の背中を、日本は「やさしく」押してあげている。
そんな日本に、「中国の国防費は不透明だ」とか「中国の国防費の増大は日本に脅威だ」などと言う資格が、どこにあるというのだろう。
結論的に言えば、中国の現在の軍事力は、アメリカに遥か及ばないので、中国は戦争を仕掛けてきたりはしないだろう。中国が台湾を軍事攻撃すれば、アメリカが黙っていないからだ。現状では、中国はアメリカの軍事力には絶対に勝てない。
但し、ハイテク分野では違う。
習近平の国家戦略「中国製造2025」を達成して、アメリカを超える「危険性」を孕んでいる。それは、実際には起きないであろう火を噴く戦争よりも、実は恐ろしい。実現性が高く、目に見えない形で迫ってくるからだ。
その中国に手を貸しているのが日本だ。
これに関しては警鐘を鳴らし続ける。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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