環境が「人権」をもち、破壊を逃れるために人間を訴える時代がやってきた
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月18日 18時52分
<世界では、自然や川に法的な人格と環境保護のための訴訟を起こす権利を認める動きが広がっている>
今世紀の初め、大自然に対し法的な権利を認めるという考えは環境法の専門家からも世論からもまともに相手にされなかった。
ところが今では、ニュージーランドのワンガヌイ川には法的な人格が認められているし、インドのガンジス川にも先ごろ、「人権」が認められた。エクアドルは憲法で、自然には「完全に尊重される権利」があると定めている。
いったいこれらは何を意味しているのだろうか。
自然に対し「権利」を与えるという理論はもともと、1970年代にアメリカの法学者クリストファー・ストーンが、環境保護戦略として提唱したものだ。
環境保護を巡る訴訟の多くが、原告に訴訟の当事者となる法的な権利がないとの理由で失敗に終わっている。環境保護団体は土地の所有者でも何でもないから、訴訟を起こす権利があることを証明するのは容易なことではない。
言い換えれば、個人や団体が自然の代理人として裁判を起こし、「自然にとっての利益」を守るのは難しいことなのだ。
そこで便宜的に、ストーンは環境そのものに権利を与えてはどうかと考えた。「権利を保持する者」になれば、環境は自身のために裁判を起こす資格が認められるだろうというわけだ。この場合の自然の持つ権利とは、特定の何かに対する権利ではなく、法的に何かを主張をする機会を与えられるということを意味する。
あらゆる人に原告になる権利を認める
この理論を現実のものとするには数十年の時を要した。だが2006年、ペンシルベニア州トゥマクワ村はアメリカで初めて、村内の自然の法的権利を条例で認めた。以降、アメリカでは数十の自治体が同様の条例を制定している。
自然が権利を獲得する例は各国で相次いでいる。
エクアドルでは2008年制定の憲法の71条で、自然は「その存在および、生活環、構造、機能、進化過程の保全と再生を完全に尊重される権利がある」と定められている。
具体的には、あらゆる個人や自治体や地域社会、国家や国民が、エクアドル当局に対して自然の権利の擁護を求めることができるようになった。憲法72条の条文によれば、それには現状回復の権利も含まれる。
ボリビアでもすぐに同様の法的規定が設けられた。両国のアプローチには、2つの意味で大きな意味があった。1つは、自然に積極的権利つまり特定の何か(復旧や再生、尊重)に対する権利が与えられたという点だ。
この記事に関連するニュース
-
大分、北海道の原告が和解=強制不妊、合意後初―地裁
時事通信 / 2024年9月20日 18時43分
-
【熱海土石流】裁判へ熱海市長出廷させる目的で損害賠償求めた裁判…原告の訴え退ける判決(地裁沼津支部)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年9月18日 15時38分
-
「TikTok禁止法」巡る訴訟で口頭弁論、運営側と米政府が意見陳述
ロイター / 2024年9月17日 8時42分
-
「この国で生きる当事者に未来の選択肢をください」同性婚訴訟・福岡高裁12月に判決
RKB毎日放送 / 2024年9月2日 18時23分
-
「保護者の気分を害した罪」で告訴される教師たち…韓国・あいまいな「情緒的虐待」規定に不満続出
KOREA WAVE / 2024年8月28日 19時0分
ランキング
-
1イスラエル「次の段階計画」ヒズボラ「新たな段階に」攻撃の応酬続く
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年9月23日 16時51分
-
2中国政府が1万人参加の合同結婚式を開催 「どんどん高くなってます」背景に結納金の高騰など結婚にともなう負担増加も
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年9月23日 12時14分
-
3韓国・道路陥没、トラック2台が陥落…各地で豪雨被害続出
KOREA WAVE / 2024年9月23日 15時0分
-
4中国「愛国ビジネス」暴走、日本人襲撃...中国政府は止められないのか
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月23日 11時0分
-
5イスラエル、レバノン市民に電話で退避警告 国営通信社
AFPBB News / 2024年9月23日 18時31分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください