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環境が「人権」をもち、破壊を逃れるために人間を訴える時代がやってきた

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月18日 18時52分

確かに中国からエルサルバドルまでさまざまな国で、先住民は環境を守る戦いの最前線に立っている。

だが先住民=自然の保護者という図式には問題もある。世界の先住民が本来的にそして同じように自然のことを大事にしているわけではないからだ。

おまけに、ニュージーランドのように法律で特定の先住民コミュニティを自然の代理人として規定しているのでない限り、そのコミュニティが自然のために立ち上がるという保証はない。

エクアドルやボリビアでは、法律の条文に道義的な内容が多く盛り込まれ、先住民コミュニティへの言及が多くなされている。これにより、自然の保護者が誰かを明確にしているわけだ。

だが実際問題として、訴訟を起こす権利は幅広く認められており、エクアドルでこれまでに自然に代わって戦われた2件の訴訟のどちらも、原告は先住民団体ではなかった。

1つは前述のとおりアメリカ人が原告だったし、もう1つは特定の地域における鉱物の小規模だが違法な採掘を差し止めるために当局が起こした訴訟だった。確かに法律の文言には背いていないかも知れないが、その精神には反していると言えるだろう。

また、自然の代理人たる要件を明確に定めていないがために、法律が乱用される可能性もある。理論的には、石油会社がエクアドルの石油資源を守るために、自然の権利を口実に裁判を起こす可能性もある。

長い目で見れば、要件を厳しく定めたニュージーランドのアプローチの方がいい結果を生むかも知れない。川など自然の構成要素1つ1つに人格を与え、特定の保護者を定めることにより、ニュージーランドはいつか、海や山々や森を基本的に「所有物」として扱う今の硬直化した法体系を劇的に変えることができるかも知れない。そして自然に対し、法定で権利を主張する機会を保証するようになるかも知れない。

(翻訳:村井裕美)

Mihnea Tanasescu, Research Fellow, Environmental Political Theory, Vrije Universiteit Brussel

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

*この記事は、2017年6月19日に掲載されたものです。




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ミフネア・タナセスク(ブリュッセル自由大学政治学部研究員)


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