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ボーイング最新鋭機はなぜ落ちたのか

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月20日 19時15分

ライオン・エアの事故機から回収されたブラックボックスに基づいて調査したインドネシア政府によると、事故機のパイロットたちは「いわば10分間の綱引きに苦しんだ。新しい失速防止装置(MCASのこと)は容赦なく26回も機首を押し下げ、機体は制御不能に陥った」とシアトル・タイムズは伝えている。「パイロットは機首が下がるたびに引っ張り上げた。しかしなぜか、前日に操縦したパイロットたちがしたように、単純にMCASを遮断しようとはしなかった」とも指摘している。

ボーイング社が11日に発表した声明によると、同社はライオン・エア機の事故後、「安全な737MAXをさらに安全にするため機体制御ソフトウエアの拡張機能を開発している」ところであり、「そのためにFAAと緊密に協力してきた。数週間後には737MAXシリーズに搭載する」予定だという。

ボーイングがライオン・エアの事故を受けてFAAと協力した内容を知る関係者によれば、ボーイングは緊急時の操作を単純化することで安全性を改善できるとみたようだ。それは4月予定の変更に含まれる。

ほかに予定される変更は、ソフトウエアによる自動制御を減らすことや緊急時に(装置でなく)操縦士が素早く対応できる態勢を強化することなどだ。

FAAの資料によると、米国内では737MAX8の制御について最近数カ月に少なくとも5回、操縦士から問題点の指摘があったと、ニュースサイトのポリティコが伝えている。その一部はMCAS関連のようだ。

ちなみにトランプも大統領令を出す前日にツイッターで「航空機の操縦は複雑になり過ぎている」と投稿していた。



名ばかりの新型機だった

専門家の間からは、世界最大の航空機メーカーとあろうものが前代未聞の信頼感の危機にさらされるとは一体なぜなのかと問う声もある。

答えは737MAX開発史に潜んでいるかもしれない。それが「夢の新型機」ではないことはボーイング社も認めている。

737の後継にはまったく新しい機種を開発する予定だったが、競争激化で急きょ改良型を導入することになったという。

11年に仇敵エアバス社がA320neoをアメリカン航空に260機注文させるという形で米市場に乗り込んでいた。だからボーイングも新型機で迎え撃つしかなかった。

737の改良には5年の月日を費やした。新式の大型エンジンを機首に近めの位置に搭載して揚力を増す。だがそれでは離陸直後に機首が上向きになり過ぎるかもしれない。失速する可能性もある。対策として作られたのがMCAS、すなわち自動的に機首を下げるシステムだ。

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