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「一帯一路」参加でイタリアは中国の港になってしまうのか

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月26日 15時8分

既にジェノバの港湾当局と中国交通建設(中国の運輸会社)の提携をイタリア政府が承認しており、港湾都市トリエステも同様に中国との合意を交わしたい考えだ。こうした合意が実現すれば中国と一帯一路構想は、ヨーロッパ大陸へのより直接的な輸送ルートや、ドイツ、オーストリア、スロベニアをはじめとするヨーロッパ諸国の鉄道その他の交通ネットワークにアクセスするための理想的なハブを手にすることになる。

イタリアは、中国に国内の港へのアクセスを提供することで、中国主導のアジアインフラ開発銀行(AIIB)からの投資が得られることを期待し、一帯一路における自国の役割とAIIBを関連づけようと試みている。

習の訪問先に港湾都市パレルモが含まれていることを考えると、中国がヨーロッパの輸送拠点として同港を選択肢に入れていることは明らかだ。2018年9月には北アフリカのアルジェリアが一帯一路構想に参加しており、パレルモとの提携が実現すればアフリカへの新たな貿易ルートを築くのに役立つだろう。

イタリアの今回の決断について、国際社会の反応は、ひいき目に言って複雑だ。ドイツとフランスは先頭に立ってイタリアを批判。透明性の欠如や、一帯一路において中国企業が優遇される不公平の問題、欧州企業の国内プロジェクトへの参加を制限する中国の保護主義など、懸念を並べ立てた。

国際社会は批判的も足並みは揃わず

EUは特に、イタリアの決断がEUの対中政策に及ぼす影響を懸念している。だがヨーロッパの対「一帯一路」政策に関しては、既に2017年の時点で団結が崩れていることは特筆すべきだろう。同年、中国の李克強首相がハンガリーを訪問した際に、同国とポーランドやチェコをはじめとする中・東欧諸国が一帯一路に参加。ギリシャ、ポルトガルとクロアチアもその後に続いた。

アメリカも、イタリアの決断は一帯一路に関するG7の立場を崩すものだと批判してきた。ドナルド・トランプ米政権は、一帯一路は「債務の罠」外交のツールであり、中国は偉ぶっていると非難している。

米中間の対立の激化も影響している。両国は貿易戦争の渦中にある。アメリカが中国のハイテク企業、華為技術(ファーウェイ)製の通信機器の使用を禁止し、スパイ罪で訴追したのは、アメリカが戦略産業への中国の投資や買収を警戒している証拠だろう。だがここでも同盟諸国の足並みは揃わず、イタリアの電話大手テレコム・イタリアやイギリスなどは、ファーウェイ製品の使用を続ける見込みだ。

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