平成における消費者の変容:経済不安でも満足度の高い若者
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月29日 18時0分
若者を中心にライフスタイルも変化した。2000年代は未婚化が進む中で「負け犬」や「婚活」という言葉が登場した。「草食男子」「歴女」「イクメン」「日傘男子」など、男女のライフスタイルのボーダーレス化も進んだ。また、若者の競争意識や消費欲が低下している様子や堅実志向が高まる様子は、「ゆとり世代」「さとり世代」「マイルドヤンキー」と称された。
「バブル世代は消費意欲が旺盛」という印象があるように、消費行動に関わる価値観は、アルバイト代やお小遣いで消費の楽しさを知り始めた学生時代、あるいは、社会人になり自由になるお金が増えた時期の社会環境に影響される傾向がある。
平成元年生まれの価値観が形成されたのは、景気低迷が続く一方、技術革新で世の中が格段に便利になった時期だ。また、デフレが進行し、ファストフードやファストファッションなど、安くて良いモノやサービスが流通した時期でもある。このような中で、今の若者では、節約志向が根底にありながらも、「お金を使わなくても楽しめる」「お金を使うことが必ずしもすごいことではない」という価値観が形成されていったのではないだろうか。
3――「今の若者はお金がない」?~バブル期より増える可処分所得、非正規でも約20万円
世間では「今の若者はお金がない」という印象があるようだ。しかし、統計を見ると事実は異なる。過去にも述べた通り1、若者の可処分所得はバブル期よりも増えている。
総務省「全国消費実態調査」にて、1989年と2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得を比べると、男性は18.4万円から23.0万円へ(+4.6万円、対1989年実質増減率+12.2%)、女性は16.4万円から18.3万円へ(+1.9万円、同+0.5%)と増えている2(図表4)。
背景には、初任給が増加傾向にあること(図表5)、また、大学進学率の上昇で、初任給の高い大学卒が増えたことなどがあげられる。
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1 久我尚子「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」(光文社新書、2014)等
2 対1989 年実質増減率は、1994 年は男性+3.5%、女性+11.3%、1999 年は男性+9.6%、女性+6.2%、2004 年は男性+16.1%、女性+10.6%、2009 年は男性+7.8%、女性+23.0%。
二人以上勤労者世帯の大人1人当たりの可処分所得は、世帯主の年齢が35~39歳と40~44歳の世帯で最も多く、平均18.7万円である(図表6)。2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の男性と比べると▲4.3万円も下回る。女性と比べると若干多いものの、家族世帯では、この中から教育費など子どもにかかる支出も出さなくてはならない。よって、家族世帯の大人1人が自由にできる金額は、図表6で示す値よりも大幅に少なくなるだろう。
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