平成における消費者の変容:経済不安でも満足度の高い若者
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月29日 18時0分
ここで1つ興味深いデータを示したい。今の若者は全体としては「お金を使わない」傾向が強まっているが、やはりいつの時代も消費意欲が旺盛な層もある。
当研究所の生活者1万人を対象とした調査によれば、若者では全体と比べて「ものは買うより、できるだけレンタルやシェアで済ませたい」「計画的な買い物をすることが多い方だ」「毎月、決まった額の貯金をしている」「日常的におサイフケータイを使い買物やポイントサービスを利用している」などの堅実な消費態度に当てはまる割合が高い(図表8)。
一方で、年収400万円以上の若者(同調査で30代の上位4割、20代の上位2割)では、これらに当てはまる割合が高まるとともに、「多少高くても品質の良いものを買うほうだ」「普及品より、多少値段がはってもちょっといいものが欲しい」といった贅沢さを求める割合も高まる。
なお、今の若者は上昇志向が弱く、内向き志向だなどと言われるようだが、年収400万円以上の若者では「基本的には潜在的な成功を追い求めている」(56.1%)にあてはまる割合が全体(44.0%)より+12.1%ptも高い。
今の若者は、経済状況によらず共通して堅実かつ合理的な消費態度を持ちながら、経済的に余裕のある若者では、こだわりのあるものにはお金を使うような高級志向も持っている。
5――消費構造の変化~モノからコトへ、デパートからネットへ、BtoCからCtoCへ
消費社会の成熟化や技術革新により、若者の価値観が変わるだけでなく、消費者全体で構造変化が生じている。
総務省「家計調査」によると、1990年から2017年にかけて、二人以上世帯の消費支出では、「被服及び履物」が半減する一方(1990年=100とすると2017年は49.5)、「交通・通信」は大幅に増え(100→161.9)、「保険医療」も増えている(100→112.7)(図表9)。つまり、消費支出はファッションなどのモノから、通信や医療などのサービス(コト)へと移っている。
また、若者ほどスポーツ観戦や映画などのコト消費への意欲が高いという調査結果もある。
消費者庁「平成28年度消費者意識基本調査」によると、現在お金をかけているもののうち「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」の割合は、15~19歳(34.6%)で最も高く、20代(26.6%)が続く。一方で30~70代は15%以下である。
モノを買う場所も変化している。小売業の売上高は、1990年では百貨店が最も多かったが、1990年代半ばにスーパーが、2009年にはコンビニが上回り、近年はネット通販の伸びが著しい(図表10)。
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