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平成における消費者の変容:経済不安でも満足度の高い若者

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月29日 18時0分



一方で1人暮らしの若者は、若者の中でも経済的に余裕のある層という可能性もある。

そこで、非正規雇用の若者の可処分所得を推計したところ、25~29歳では男性は月平均19.8万円、女性は17.6万円となり3、非正規雇用者でもバブル期の1人暮らしの若者よりも多い。

なお、25~29歳の非正規雇用者の約3割は大卒・大学院卒であり、大卒・大学院卒の非正規雇用者の可処分所得を推計すると、男性22.1万円、女性20.2万円となる。

景気低迷の中で育った今の若者だが、実は目先の収入は案外ある。また、未婚化の進行や初婚年齢の上昇で、かつてより自由に使えるお金を持つ独身の若者が増えている。このことが、図表2の所得・収入の満足度の高さにつながるのではないだろうか。

4――「今の若者はお金を使わない」?~消費性向の低下、経済状況によらず堅実・合理的な諸費態度


「今の若者はお金がない」わけではないが、「お金を使わない」傾向はあるようだ。

総務省「全国消費実態調査」にて、1989年と2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の消費支出を比べると、男性は15.4万円から15.6万円へ(+2.2万円)、女性は15.3万円から16.1万円へ(+0.8万円)と名目ではやや増えているが(図表7)、実質では減っている(▲9.3%、▲5.4%)。なお、2009年までは男性は実質増加傾向にあったが、女性は1994年と1999年は減少している4。つまり、可処分所得は一貫して増えていたが、消費支出は必ずしも増えているわけではない。さらに、消費性向を見ても、男女ともおおむね低下傾向にある。

つまり、若年単身勤労者世帯の可処分所得は増えているが、増えた所得を必ずしも消費へ回すわけではなく貯蓄へ向けている。そして、その割合は増えており、若者の貯蓄志向は高まっている。



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3 厚生労働省「平成25 年賃金構造基本統計調査」及び総務省「平成26 年全国消費実態調査」より推計。「賃金構造基本統計調査」の最新値を使って推計すると、非正規雇用者の可処分所得はさらに増える。
4 対1989 年実質増減率は、1994 年は男性+1.3%、女性▲3.2%、1999 年は男性+5.7%、女性▲1.1%、2004 年は男性+7.1%、女性+4.9%、2009 年は男性+8.5%、女性+5.3%。



この背景には、目先の収入は案外あるものの、非正規雇用者の増加や正規雇用者でも賃金カーブが低下していること(後述)、少子高齢化による将来の社会保障不安などから、倹約志向が高まっている影響があるのだろう。一方で技術革新やデフレの恩恵を受けて「お金を使わなくても楽しめる」環境は広がっている。今の若者は「お金がない」わけではないが、将来不安から「お金を使わない」、一方で消費社会が成熟化し「お金を使わなくてもすむ」環境が広がっている影響も無視できない。

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