中国が世界54カ国にAI監視技術を輸出
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月24日 17時57分
<デジタル技術の進歩によって、政府が国民を監視する能力は飛躍的に向上した。監視の先頭を行く中国は国内の少数民族を弾圧し、その技術を世界中の独裁者に輸出し始めている>
米テック大手マイクロソフトは、軍事研究を行う中国の大学と提携して、政府の監視と検閲の機能を強化する人工知能(AI)システムを開発している。両者の事業提携に米上院議員2人が公に批判の声を上げているが、懸念されるのは、中国の国防科技大学がマイクロソフトに望んでいることだけではない。
私の研究が示すように、デジタル技術による政治弾圧手法の登場は、国民と国との関係に大きな影響を与えている。新技術のおかげで、政府は国民を監視、追跡、調査する前代未聞の能力を手にしている。法の支配の強い伝統を持つ民主主義国の政府でさえ、こうした新しい能力を乱用しがちだ。
不可解な制度や人権侵害が多い国では、AIシステムがより大きな被害をもたらす可能性が高い。中国はその代表的な例だ。政権幹部はAI技術を熱烈に受け入れ、新疆ウイグル自治区に世界最新の監視システムを構築、住民の日々の動きとスマートフォン使用状況を追跡している。
中国によるこれらの技術の悪用は、世界の独裁者たちにとっては格好の手本となり、開かれた民主的な社会にとっては、直接の脅威となる。中国以外の政府がこのレベルのAIによる監視を再現したという証拠はないが、中国企業は同様の基礎技術を世界中へ積極的に輸出している。
進む警察のAI依存
人工知能システムは世界のいたるところに存在し、スマートフォンやインターネット検索エンジン、デジタル音声アシスタント、ネットフリックスの映画一覧表示機能を支援する。分析するデータ量の増加、アルゴリズムの向上、高度なコンピュータチップのおかげで、AIがいかに急速に拡大しているか、気づかない人は多い。
より多くの情報が入手でき、分析が容易になるときはいつでも、政府は興味を持つ――それは独裁政権だけではない。たとえばアメリカでは1970年代に、政府の情報機関(FBI、CIA、NSAなど)が公民権運動家や政治活動家、アメリカ先住民のグループを監視し、攻撃するための広範な国内監視ネットワークを設立したことが明らかになった。
こうした問題は消え去ってはいない。今日のデジタル技術のせいで、より多くの組織がもっと深く入り込んで対象を監視することができるようになった。
たとえば、アメリカの警察は積極的にAI技術を採用している。警官がパトロールをすべき場所を決めるために、犯罪が起こりそうな場所を予測するソフトウェアを使い始めた。また犯罪捜査にも顔認識とDNA分析を使用している。
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