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新天皇・新皇后が「国際派」に慌ててイメチェンするのは危険だ - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月9日 18時20分

<英国に学んだ歴史学者と米大卒の元外交官という新天皇新皇后への期待は、国際社会において大きい。だが世界が内向き化し、日本社会が複雑化する中、その期待に応えるのは簡単ではない>


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◇ ◇ ◇

天皇譲位のドラマは、2016年8月に「おことば」のビデオメッセージという形で幕を開けたわけだが、この時点のアメリカの報道には「高齢の天皇が引退声明」など、まるで高齢化日本を象徴するニュースであるかのような表現も見られた。

では、アメリカや国際社会は、天皇制や皇室について「古さ」を象徴するものとして軽んじているのかというと、それは違う。エンペラーという格を有する日本の天皇は、国際社会における外交儀礼では最高位の扱いを受ける。訪日し両陛下と会談した各国の元首や首脳は会見を誇りとするし、国賓として天皇皇后を招くことは、各国にとって最高の栄誉であるのは間違いない。

特にアメリカの場合は、1975年の昭和天皇・香淳皇后の訪米成功以来、旧敵国としての不快感は雲散霧消し、日本の皇室への関心や尊敬心は極めて堅固となっている。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が宮沢喜一首相の晩餐会で体調を崩した後の皇族の気遣いは今でも語り草であるし、ヒラリー・クリントン元国務長官は自伝の中で皇室との親交を詳しく語っている。その延長で、英国に学んだ歴史学者と米大卒の元外交官という新天皇新皇后への期待はアメリカにおいても、国際社会においても大きいのは間違いない。

だが、その期待に応えるのは簡単ではない。平成の天皇皇后は、国際社会には平和、慈善、文化という領域で友好関係を拡大しつつ、国内向けには大戦の痛みや、度重なる自然災害という苦痛を癒やす存在として振る舞い、見事なバランス感覚を示してきた。けれども、令和時代の天皇皇后が直面する環境は、平成とは大きく異なる。

対立構図と支持層のねじれ

1990年代から2000年代においてG7各国の間では、クリントン、オバマのアメリカ、ブレアの第三の道、EUの統合深化といった歴史を背景に、人道主義や異文化理解が前面に押し出されていた。だが、現在は、「ブレグジット(英EU離脱)騒動」や「自国ファースト」の時代である。天皇皇后が「国際派」として振る舞う場合のコミュニケーションはより難しさを抱えている。

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