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18年米中間選挙では外国政府の干渉はあったのか──ロシア疑惑のその後

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月10日 18時20分

外国の活動認定、影響調査せず

このような大統領令の内容は、一見したところでは外国政府によるアメリカの選挙への介入疑惑についてのトランプ政権の積極的な姿勢を示したように思われるが、実際の調査は拍子抜けするほど消極的であった。

大統領令の初の適用対象となったのは、2018年11月の中間選挙である。この選挙の際にもフェイクニュースの流布や各種のサイバー攻撃が行われたとみられており、国家情報長官は同年12月21日、大統領令に基づく初の報告書を大統領に提出したと声明した。

国家情報長官の声明では、ロシア、中国、イランその他の国々はその戦略的利益を増進させるため、中間選挙も含めてフェイクニュースの発信・流布、その他の影響流布活動を行っているとされている。しかし、中間選挙の結果にそれらが影響を与えたかどうかについては、そもそも調査自体を行わなかったと言明したのである。情報機関に課せられている任務は外国のアクターの意図、能力および行動を監視・調査することであって、アメリカ国内の政治過程や世論を分析することではないからであるという。

大統領令では、調査対象には「選挙の過程もしくは制度に対する国民の信頼を損なう目的もしくは効果」があるものを含むとしている。実際に、ロシア、中国、イランその他の国々がフェイクニュースの発信・流布やサイバー攻撃によって選挙に干渉しようとしている実態を、国家情報長官は調査によってつかんでいるもようである。にもかかわらず、国家情報長官は、アメリカの政治過程や世論の分析は任務外であるとして、その権限行使を自ら限定して、調査結果の非公開ではなく分析調査自体を行わない(少なくとも、行わないと言明する)という方法を選択した。この姿勢にトランプ政権の意向が反映されていることは、おそらく間違いないであろう。



保守派が離反の可能性も

このようなトランプ政権の消極的な姿勢は、連邦議会の民主党議員から特に強い批判を受けている。一方、共和党議員は、トランプ氏を当選に導いた白人労働者や農民などの支持者の間で、いまだにトランプ氏の人気が衰えを見せないこともあって、強い批判は避けてきたが、モラー報告書の墨塗りになっている部分の公表問題やモラー特別検察官の連邦議会召喚については、有力議員が民主党議員に同調する可能性が指摘されている。

仮にモラー報告書の中に、ロシア政府からの取引の申し出にトランプ陣営の関係者が応じていたという証拠があり、それが公表された場合には、トランプ大統領とロシアとの共謀の疑惑が強まることになり、かつてクリントン大統領がホワイトハウスのインターン学生へのセクハラ問題で弾劾訴追手続きの発動を受けたように、弾劾される可能性もゼロではない。

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