「ゾウの天国」ボツワナがゾウの狩猟を解禁
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月27日 19時0分
<自然保護の優等生だったボツワナだが、新しい指導者が10月の選挙対策にゾウを利用しようとしている>
アフリカ南部のボツワナ政府はこのほど、5年間にわたって続けてきた「トロフィーハンティング」の一時停止措置を取りやめた。トロフィーハンティングとは、娯楽目的で行う大型動物の狩りのことだ。
ボツワナでは2014年、野生動物の明らかな減少を受けて、当時のイアン・カーマ大統領がゾウの狩猟を禁止。それまでの10年間でゾウの生息数が15%も減少していたからだ。禁止前には年420〜800頭のゾウの狩猟が認められていたが、枠を無視した密猟も後を絶たなかった。
それから5年、ボツワナはアフリカ大陸最後の「ゾウの聖域」と言われるようになった。ボツワナにはサバンナゾウ(アフリカゾウの2種類の亜種のうち1種)の3分の1強が生息している。
ボツワナのアフリカゾウの360度映像
ところが昨年4月に就任したモクウィツィ・マシシ大統領は、カーマ政権とは正反対の「保護政策」を打ち出している。
マシシは先ごろ、アンゴラとボツワナ、ナミビア、ザンビア、ジンバブエの首脳と環境相を集めた国際会議を開催。アフリカ南部諸国のゾウの管理に関する共通ビジョンを作る、という名目だったが、実際の目的はボツワナのゾウの狩猟再開に向けた支持を取り付けることにあった。
環境相は「ゾウの増えすぎ」を主張
ボツワナのキツォ・モカイラ観光・環境相は、同国内のゾウの個体数は増え過ぎた、と主張した。この「増えすぎ」論は、狩猟解禁派の論拠の一つ。狩猟(場合によっては間引き)でゾウの数が減れば、畑を荒らされる、襲われるなど、人間とのトラブルも減らすことができる、というのだ。
だが、ゾウは政争の具に使われている、との見方も根強い。10月に予定されているボツワナ選挙に向け、マシシ陣営が狩猟解禁を支持している有権者を懐柔する手段として利用している、というのだ。
トロフィーハンティングと象牙取引を正当化する根拠として繰り返し使われてきた議論には、「ボツワナのゾウの生息数は急増しており、ある地域で特定の種を維持できる最大の個体数である『環境収容力』を超過している」というものもある。
新大統領の就任後1年で密猟が拡大
例えばモカイア環境相は、ボツワナのゾウの生息数は16万頭で、環境収容力(5万4000頭)の3倍近いと主張している。
だがボツワナ北部で昨年上空から行われた科学的調査の結果はそうした議論とはかけ離れている。この調査では、ボツワナ国内のゾウの推計生息数は12万6114頭で、2014年以降ほぼ変わっていない。また調査では、密猟の急増も明らかになった。報告書にはこう書かれている。
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