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アメリカが陥るファーウェイ制裁の落とし穴

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月30日 11時30分

トランプ政権の対中姿勢は、診断は正しくても処方を間違える場合がある。今回も強引な手法しか通じないらしい体制と交渉するための、したたかな戦術と評価できるかもしれない。しかし貿易交渉の戦術面で勝っても、あるいは不当にのし上がった企業の力をそぐことができたとしても、アメリカの長期戦略の持続可能性を損なうのは好ましくない。

もしトランプ政権が「エンティティー・リスト入り」が「死刑宣告」を意味すると考えているなら、今回の措置は裏目に出るかもしれない。果たして徹底的に実施するのか、それとも長期的には一部の米企業からファーウェイへの販売免許が更新されるのか、まだ分からない。

既に欧米企業が次々と禁輸措置に従い始めているとはいえ、8月まで現行のネットワークの更新や修正などについては猶予が与えられている。これでファーウェイも終わりだなどという期待を抱く者は、失望を味わうことになるかもしれない。

ファーウェイにも弱点はあるが、同社の底力と国の看板企業として支援する中国の決意を過小評価するべきではない。

ファーウェイの任正非(レン・チョンフェイ)CEOは、こう宣言している。「私たちは世界の頂点に立つ夢のために自分自身と家族を犠牲にしてきた。この夢のために、いずれアメリカと対立することは避けられない」

同社が子会社ハイシリコンで独自の代替製品を開発してきたのは、こうした不測の事態に備えるためだった。

ファーウェイが最悪のシナリオに対応できるかどうかは分からない。しかし中国政府の半導体産業への投資は実を結び始め、有利な環境が整いつつある。

最近の外圧のせいで、中国は重要な革新的技術の開発を国内で進める計画を強化し、「独立独行」を実現する方向に向かっている。今回の制裁は米企業の弱体化を招く一方、中国政府の決意を強化するという意図しない結果をもたらすかもしれない。

5G開発競争は、ファーウェイが勝ったも同然というわけではない。今回の措置に対する最初の声明で、ファーウェイは自らを「5Gの比類のないリーダー」と宣言した。この主張はマーケティング戦略として優れているとしても、完全に正確とは言えない。

ファーウェイは、ノキアやサムスン、エリクソン、クアルコムなど5G技術で競合する多くの企業の1つにすぎない。確かにファーウェイはシステム・インテグレーターとしての優位性など、有利な立場にあるように見える。5Gを構成する重要な機器の主要メーカーでもある。

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