アメリカが陥るファーウェイ制裁の落とし穴
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月30日 11時30分
アメリカだけでは無理
ただし、この利点も5Gの具体化とともに進化を続ける業界では確実なものではない。
今後、アメリカはファーウェイの独占を防ぐ代替策を積極的に推進する必要がある。ファーウェイがもたらす最大の脅威は、同社の5G支配への強過ぎる思いが公正で健全な競争を阻害し、エコシステム全体の活力を損なう可能性があることだ。
ファーウェイは、中国政府の補助金など不透明な資金調達によって、競合他社との価格競争に勝ち、市場シェアを獲得してきた。同社は現在、世界の電気通信市場のかなりの部分を占め、30%近いという推定もある。
気掛かりなのは、ファーウェイの4Gを採用した国では5Gのネットワークも同社のシステムしか選択肢がなくなるかもしれないことだ。
アメリカは5Gに関して、健全な競争の促進を目指すべきだ。5Gの開発と構築は、ベンダー間の選択肢の多様化とサプライチェーンの再調整によって、よりうまく機能するだろう。
5Gの開発で競争力を付けるためには、米政府は企業への資金提供や税制優遇措置など、研究開発の支援にもっと力を入れるべきだ。
同時に、アメリカは単独で5Gをリードすることはできない。セキュリティーとイノベーションに関するアメリカの政策は、同盟国や提携国との緊密な協調を優先すべきだ。
さもなければ、ファーウェイに対してどんな措置が取られても、5Gの将来をリードし、支配するのは中国ということになるかもしれない。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2019年06月04日号掲載>
※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。
エルサ・カニア(中国軍事・技術アナリスト)
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