米イラン戦争を回避する方法はある
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月1日 14時0分
<主戦派と慎重派の対立で揺れるトランプ――偶発的な軍事衝突を避ける方法はある>
ホワイトハウスはいつものように否定しているが、対イラク政策の目的と、軍事的脅威あるいは武力行使の果たすべき役割に関して、トランプ米政権内の対立が明らかになってきた。
主戦論派はイランと戦争がしたくてうずうずしている。相手をけしかけて、軍事攻撃の口実になりそうな行動を取らせようとしているようだ。
ドナルド・トランプ大統領はイランを交渉の席に連れ戻して、より良い核合意のディール(取引)をまとめたいと繰り返している。地域におけるイランの振る舞いと弾道ミサイル開発について、譲歩を勝ち取ろうというわけだ。一方で慎重論派は、戦争に向かいつつあることを憂慮している。中東への米軍の増派を正当化できるかどうかにも、懐疑的だ。
米政権の真の狙いが何であれ、主戦論者と戦争回避論者が合意できるはずのことが1つある。イランとの偶発的な、あるいは意図しない武力衝突は、避けなければならないということだ。
今のところ米政権の行動は、計算違いや誤解、意思の疎通の問題から戦争になだれ込むリスクを、むしろ高めている。イランとアメリカの間に直接かつ頻繁に接触できる交渉ルートがなく、事が起きたときに拡大を防ぐ仕組みがないため、かなり危険な状況だ。
確かにトランプはイランとの戦争に乗り気ではなさそうだ。ただし、選択肢から完全に消えたわけではない。何しろトランプは気まぐれさで悪名高い。しかも、省庁間の意思決定プロセスは完全に破綻しており、さまざまな選択肢や見解が大統領まで届かない。そしてサウジアラビアは、トランプをそそのかしてイランをピンポイントで攻撃させたいようだ。
官僚的な技にたけた武闘派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、注意散漫で知識も情報も乏しいトランプを口説き落とすことは十分にあり得る。イランに対して限定的な軍事作戦を行えば、コストもリスクもほとんどないか、一切なしでアメリカの目的を達成することは可能だと、大統領を納得させるかもしれない。
米政権が戦争を望んでいなくても、緊張はかなり高まっており、イランはアメリカの意図が分からずに不安を募らせている。米軍はイラン軍とその代理勢力の間近に迫っていて、些細なきっかけで衝突しかねない。
米政権が戦争を引き起こすつもりだとしたら、外交的にも政治的にも軍事的にも条件闘争の場をアメリカに有利に整えた上で、アメリカが選んだタイミングと場所で始めたいはずだ。
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