米イラン戦争を回避する方法はある
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月1日 14時0分
ロシアを含む3カ国関係
戦争を回避しながら軍事的な圧力を維持するにしても、不用意な武力衝突に発展する可能性は減らさなければならない。
その方法はたくさんある。例えばシリアでは、イラン勢力への攻撃を認める米軍の交戦規則を厳格化すれば、イラン軍の指揮系統から外れた行為が意図せぬ衝突につながるリスクを小さくできる。シリア南西部で、アメリカとイランがそれぞれ支援する軍事勢力間の緩衝地帯を拡大することもできるだろう。
アメリカはロシアに対し、イランに働き掛けを続けて、シリアで米軍との接触を避けるよう強く求めるべきだ。アメリカ、ロシア、イラン3カ国の関係を築いて軍事衝突を回避することに、ロシアがどこまで関心を持っているか、探る必要がある。
イラクでの偶発的衝突を避けるには、アメリカはイラク治安部隊を仲介役として、イラン軍やイランとつながるシーア派民兵組織との間にコミュニケーション・危機管理体制を整えるべきだろう。事件発生時の暴走や激化を防ぐため、アメリカ、イラン、イラク3カ国から成る紛争解決委員会を設立してもいい。
アラビア半島と周辺で想定できる衝突のシナリオはほかにもある。例えば、イランが支援するイエメンのシーア派武装勢力ホーシー派への密輸品運搬の疑いで、米海軍がイランの民間船舶に乗り込もうとして死傷者が出るといった事態だ。16年に起きた事件のように、米海軍艦船が誤ってイランの領海に入り、米兵が拘束される懸念もある。
ホーシー派はイランが提供するミサイルやドローン(無人機)を、イエメン内戦に軍事介入するサウジアラビアの領内に飛ばしている。これによって自国の重要な資産や主要都市が被害を受けた場合、サウジアラビアはほぼ確実にイエメンでの攻撃を激化させる。イランを直接攻撃する可能性もあり、アメリカは紛争に巻き込まれるだろう。
アメリカとイランの間には、従来の船橋間無線通信を除けば、船舶衝突を防止する仕組みが公式・非公式を問わず存在しない。協力すれば、この手の取り決めは比較的早期に実現可能だ。
一方、イエメンでサウジアラビアとホーシー派の対立激化を防ぐため、交渉や規範遵守目的のチャンネル、少なくとも危機勃発の際に意思疎通を図る窓口の設置をサウジアラビアとイランに促してはどうか。
最大のリスクは同盟国
各国海軍間の信頼醸成努力を再開する道もある。日米中など21カ国は14年、西太平洋海軍シンポジウムで「海上衝突回避規範」に合意した。だがペルシャ湾では、イラン革命防衛隊の反対のせいでそうした枠組みが実現していない。アメリカは欧州の同盟国やロシアを通じて、イランに再考を迫りたいところだ。
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