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富裕層向け巨大開発が中流層をニューヨークから締め出す

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月8日 16時30分

こうした変化は専門家にとっても衝撃だった。「(『クリエイティブ資本論』を書いた02年の時点で)予想できた人はいなかったと思う」と、フロリダは本誌に語った。「市長も都市計画の専門家も経済学者も予想できなかった......あっという間の変貌だった」

フロリダは17年の『新たな都市の危機』で、この間の再開発ブームを検証している。「開発業者は富裕層向けの住宅しか建てない」と、彼は言う。なぜならマンハッタンのように「地価の高い場所では、それ以外に稼ぐ方法がないからだ」。

経済が自然に問題を解決?

解決策はあるのか。優遇措置(ハドソン・ヤードは税の減免と補助金を合わせて60億ドル相当の優遇措置を受けたとされる)の下で再開発事業を進めたい業者には、市が中流層向けの住宅供給を義務付けるべきだとフロリダは言う。「優遇措置を正当化するには、手頃な住宅を増やすという条件が必要だ」

都市未来学者のジョエル・コトキンと人口統計学者のウェンデル・コックスはオポチュニティー・アーバニズム研究所の報告書で、ダラスやシカゴは都市周辺部を開発することで住宅難を解消できると論じた。そうした住宅地に一戸建てや部屋数の多い集合住宅など、中流層でも手の届く住宅を増やせばいいという。



ファーマン研究所のイングリッド・グールド・エレン所長は「特効薬」はないとしながら、公共交通網の充実を提言する。電車やバスがあれば、遠くに住んでいても通勤は楽になる。

最富裕層が都心部で投資物件を買いあさらないように、自身の居住を目的としない不動産の購入には重く課税するという手もある。ロンドンやパリ、バンクーバーは、既にそうした制度を導入している。もっとも、500万ドルのコンドミニアムをすぐに買える金持ちにとっては、多少の税金の上乗せなど痛くもかゆくもないだろう。

アマゾンの第2本社誘致は市民の反対で頓挫した Shannon Atapleton-REUTERS

どんな対策を取るにせよ、ロスのような開発業者がフロリダのような批判に耳を傾けるとは思えない。

予想どおりというべきか、ハドソン・ヤードの建設に当たって市から受けた援助は「ニューヨークでゼロから新しい街を開発」するために必要だったとロスは主張する。「今のアメリカには極左の政治家が多くて......ニューヨークに第2本社を建てるというアマゾンの計画も彼らがつぶした。しかし彼らは世の中の本流ではない」

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