1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

50代の半数はもう手遅れか──生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月12日 16時30分

一方、よほど頑張らない限り手遅れである世帯(グループ4)の割合も、年間年収の低い世帯ほど大きい傾向がある。年収が500万円未満の世帯が最も高く54%もあるが、年収1,000万円以上の世帯でも40%を超える。

なお、ボストンカレッジの退職研究センターが退職後10%以上も生活水準の低下が見込まれる世帯の割合を年収段階別に算出しているが、同様の傾向が確認できる(10)。

4――まとめと今後の課題

当レポートでは、退職前の年間収入の状況によって退職後に期待できる可処分所得も、満足できる生活水準も異なることを考慮し、老後のために用意すべき資産額を退職前の年間収入別に推計した。その上で、50代を資産の準備状況に応じて4つのグループに分類し、その割合を年間収入階級別に確認した。

その結果、50代のおよそ半数は退職後に10%以上もの生活水準低下が見込まれ、最も年間収入の高い世帯でもその割合が41%にも及ぶことが分かった。

――――――――
8 金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年調査結果)によると、50代の平均貯蓄率は9%である
9 ボストンカレッジの退職研究センターが算出するナショナル・リタイアメント・リスク・インデックスにおけるリスクの定義、退職後に生活水準が10%以上低下するに準拠
10 研究員の眼『貯蓄額よりも貯蓄率-リタイアメント・リスクについて考える』(2019年3月18日)





では、10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯はどうすればよいのだろうか。選択肢として考えられるのが、退職後もリスクのある資産へ投資することにより資産の増加を目指すことである。

仮に、退職後、全世帯が年率1.5%で運用できる場合、10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯の割合は、50代全体で46%から39%に低下する。しかし、退職後の消費支出に占める公的年金の割合が高く、運用にあてられる資産額が少ない低所得世帯における効果は限定的である(図表6)。

この他に、(1)より長く働き続けることや、(2)貯蓄率を上げることが考えられる。しかし、貯蓄率をあげることは、年間収入の上昇が期待しにくい50代にとっては、早期に生活水準を低下させることに他ならない。また、(3)リバース・モーゲージの活用も考えられる。10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯は、借入金残高が多い傾向がある。また、退職金を受け取った人の2割が、退職金を住宅ローンの返済に充てているという調査結果もある(11)。退職金を住宅ローンの返済に充てず、リバース・モーゲージに借り替えることで、生活水準の低下を防げる可能性がある。最後に、(4)10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯が長寿年金等により互いに助け合うことである。老後のために用意すべき資産額は、資産が死亡時までに枯渇する確率が5%となる資産額と一致するように算出している。人生100年時代とはいえ、全員が100歳まで生きるわけではないのだから、長生きリスクをシェアすることができれば、生活水準の低下を防げる可能性がある。

今後は、上記4つの方法やその他様々な方法により、10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯の割合をどれくらい減少させることが可能なのか、定量的に評価、確認していきたい。

――――――――
11 脚注1と同じ

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。

[執筆者]
高岡 和佳子
ニッセイ基礎研究所
金融研究部主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任


※6月18日号(6月11日発売)は「名門・ジョージタウン大学:世界のエリートが学ぶ至高のリーダー論」特集。「全米最高の教授」の1人、サム・ポトリッキオが説く「勝ち残る指導者」の条件とは? 必読リーダー本16選、ポトリッキオ教授から日本人への提言も。



高岡 和佳子(ニッセイ基礎研究所)


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください