1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

米サイバー軍はイラン革命防衛隊に報復攻撃したのか

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月25日 15時0分

この直後にも、日本を含む14カ国の76の大学が、イランのハッキング集団によって攻撃を受けていたことが判明している。

また2019年3月には、アメリカの200以上の企業へ大規模なサイバー攻撃を仕掛け、企業の知的財産や内部情報を盗んだり、パソコンのデータを完全に消し去るといった工作を行ってきたことも明らかになった。イランは、ライバル国の大手企業を攻撃してデータ削除するサイバー攻撃を過去にも行なっている。2012年にはライバル国であるサウジアラビアの国営石油企業サウジ・アラムコに大規模なサイバー攻撃を仕掛け、サウジ・アラムコでは3万台におよぶパソコンがウィルスに感染し、ほとんどのデータが削除されている。

2016年には、7人のイラン人ハッカーらが米司法省によって起訴されている。ハッカーらはニューヨーク証券取引所や通信会社、銀行などに営業を妨害する目的でサイバー攻撃を実施したという。さらに2013年に米ニューヨーク州のダム施設をハッキングしようとしていたことも判明している。



イランも過去には歴史的なサイバー攻撃の被害に遭っている。アメリカは2009年にイランのナタンズ核燃料施設を破壊した「オリンピック・ゲームス作戦」というサイバー攻撃を行なっている。「オリンピック・ゲームス作戦」は、「スタックスネット」と呼ばれるマルウェア(悪意のあるプログラム)が使われたことから、通称「スタックスネット」と呼ばれている。この攻撃では、米国はナタンズの施設内部でウラン濃縮作業に使われていた遠心分離機をサイバー攻撃し、不正操作して爆破させた。

このように、イランとアメリカはお互いにサイバー攻撃を繰り広げてきた。そんなことから、ホルムズ海峡に絡む緊張の高まりの裏でもサイバー攻撃が行われたというのは不思議ではない。そしてアメリカからの攻撃は今後さらに激化する可能性がある。その鍵を握るのは、トランプ大統領が2018年に独立した統合軍に格上げした米サイバー軍にある。

バラク・オバマ前大統領時代は、他国に重大な被害をもたらすサイバー攻撃については大統領による承認が必要だと「大統領政策指令20(PPD20)」に明記された。しかもオバマ時代には、サイバー攻撃は通常の兵器と同じような扱いにするようにもしている。

だがトランプ大統領はこのPPD20の「大統領の承認」という規定を緩め、米軍が他国などへ、これまで以上に迅速に、もっと頻繁に攻撃的なサイバー工作を実施できるようにした。つまり、現場に攻撃の裁量を与えた。そしてこの任務を与えられたのは、2018年4月にサイバー軍の司令官に就任したポール・ナカソネ陸軍中将だ。日系3世であるナカソネは、アメリカが誇る有能なハッキング軍団を擁するNSA(米国家安全保障局)の長官も兼務している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください