米サイバー軍はイラン革命防衛隊に報復攻撃したのか
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月25日 15時0分
実は、ナカソネは2009年から米軍がイラン有事の際に実施する予定だったイランへのサイバー攻撃作戦「ニトロ・ゼウス」の計画に深く関わっていた。
米軍はイランに対して、実際の軍事攻撃とサイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド攻撃」を考えていた。そのサイバー攻撃計画とは、例えばイランの防空レーダー網や通信システムの機能を妨害したり、国内の電力網をサイバー攻撃して停電を起こさせたりするというもの。ただ実際には、2015年に米英独仏中ロとイランが核合意に達したことで、計画は中止に。ただ、この計画に関わっていたのが現在のサイバー軍の司令官だと考えれば、イランに対してサイバー攻撃が行われることに違和感はない。
ここまで見てきた通り、国際政治や国家間のせめぎ合いなど安全保障の舞台裏では、サイバー攻撃は欠くことのできない重要な要素となっている。筆者はサイバー攻撃のこうした側面を研究してきたが、まだ日本でもその認識が広く浸透していないように感じている。
安全保障分野の重要な要素となっているサイバー攻撃――その実態は、これからの国際情勢で今以上に欠かせない重要項目になってくる。
【筆者からのお知らせ】
2018年7月2日に開催される米アカマイ・テクノロジーズ主催「Akamai Security Conference 2019~2020 企業セキュリティの『構え』を問う」にて、安全保障から犯罪までサイバー攻撃の実態と、それが一般企業にどんなインパクトをもたらすのかについて講演する予定です。(詳細はこちらから:https://www.event-entry.net/akamai/sc2019/)。
山田敏弘(国際ジャーナリスト、マサチューセッツ工科大学〔MIT〕元安全保障フェロー)
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