「無差別殺人はなくならない」という常識に、戦いを挑む高校生たち
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月23日 16時0分
過去の例では事件について語り合うのは2〜3人のグループだった。今では何百人とつながり、リツイートするから同じ思いが拡散する。事件の晩、彼らはある考えを共有しながら眠りに就いた。なぜ同じ事件が繰り返されるのか、なぜ大人は手を打たないのか、と。
高校生たちの戦いの日々を克明に記録した『パークランド』 NO CREDIT
――あの高校生たちは恐怖よりも「怒り」を抱いていた、と著書にはあるが。
彼らが行動を起こせた背景には、あの事件が何時間も続いたという事実がある。大半の乱射事件は発生から10〜15分で終わり、巻き込まれた人々は逃げることに必死で、怒りの感情が生まれる余裕はない。
しかしパークランドの高校生は、(銃撃が終わってからも)校内に閉じ込められていた。もはや「どうやって助かるか」の問題ではなかった。それよりも「どうしてこんなことになってしまったのか」と考える余裕があった。
あの晩、テレビでデービッドを見た私は衝撃を受けた。彼は「事件に遭ったばかりの被害者」のステレオタイプとは違っていた。
――著書では、生徒たちがNRAと戦おうと決意するまでの経緯にも触れている。
州都タラハシーへの旅は彼らにとって驚きの連続だった。旅の目的は、新たな乱射事件の被害者である自分たちが地元の政治家に面会し、銃規制の運動に弾みをつけることにあった。
でもタラハシーでジャッキーは気付いた。政治家は、目の前で少女が号泣しても動じない冷血なモンスターではなかった。ただし何かもっとずっと恐ろしいものが、政治家の行動を縛っていた。それがNRAの政治力に対する恐怖だ。
――『コロンバイン』には、銃撃犯を偶像化する高校生がけっこういるとの記述があるが。
今もそうだ。彼らは「コロンバイン・トゥルー・クライム・コミュニティー」を名乗り、今も活動している。
パークランドの銃撃事件の前、私は毎週30〜50人のこうした人々をソーシャルメディアでブロックしていた。彼らは大きな乱射事件があると1〜2週間は鳴りを潜めるが、やがて戻ってくる。でもパークランド後は戻ってこなかった。
――この国で将来、銃規制が実現する望みはあるか?
過去20年間、私はもっぱらアメリカで銃規制が不可能な理由を説明してきた。
だからフロリダに行って、私がずっと言い続けてきたことを「くだらない」と一蹴する若者に出会ったのは新鮮だった。それで思った。自分は降参するのを急ぎ過ぎたのかと。
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