『NHKから国民を守る党』はなぜ議席を得たのか?
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月31日 13時15分
それは単純な話で、当時日本文化チャンネル桜はNHKに対して集団訴訟を行っており、NHKと法的にも、思想的にも鋭敏に対立した関係にあったからだ。だから同じくNHKを敵視する立花氏を「同胞」として迎えたわけである。
この日本文化チャンネル桜によるNHK集団訴訟は、2009年4月5日に、NHK総合で放送された『NHKスペシャル・ジャパンデビュー"アジアの一等国"』の内容に著しい偏向と事実誤認があるとして、日本文化チャンネル桜が盛んにCS番組内で呼びかけ、合計1万人強の原告団を結成してNHKを相手取り提訴したものだ。
なぜ日本文化チャンネル桜は『ジャパンデビュー"アジアの一等国"』を訴えたのかというと、日本が戦前、台湾を植民地統治していた時代、現地住民を苛烈に差別していた、という内容が気にくわないというものだ。簡単に言ってしまえば。そして日本文化チャンネル桜は、当時NHKで放送された戦前台湾に居住していた少数民族を取材し、『NHKの当該番組は、祖先と台湾人を陥れる反日プロパガンダだ!』と大々的に気勢を上げた。
結果、日本文化チャンネル桜を中心とする原告団はこの裁判に完全敗北した。無様な訴因を構築して喰ってかかったが、裁判官から門前払いされるような格好で、この裁判は終わった。
終わったのだが、日本文化チャンネル桜にとってNHKは仇敵であり続けたので、この時期、日本文化チャンネル桜が立花氏を局の看板番組ともいえる討論番組に招聘したのは当然といえば当然の理屈である。
2)私と立花氏の邂逅~2
立花氏は、とにかく喋りがうまく、頭の回転が速い、という第一印象を持った。その内容が本当かどうかわからないが、「元NHK職員」として「NHKの内部告発」をしゃべる様子はそこら辺の素人ではなかった。だが、それだけだった。
立花氏は徹頭徹尾NHKを呪詛するが、それ以外の、所謂「保守派」が定石とする、嫌韓や反中、さらに憲法改正や靖国神社公式参拝問題、および種々の歴史(修正主義的)問題にはほとんど言及しなかった。というよりも、そういったことには関心が無いようであった。とにかく徹頭徹尾、立花氏の論点は「NHKがいかに悪の組織であるか」から出発して、「よってNHK受信料を払う必要はない(―そしてNHK受信料解約の方法教授)」という結論だけであった。
その後、私は2012年夏ごろより、或るネット右翼系の雑誌編集長になる。雇われ編集長だが、版元の強い意向により立花氏を取材することになった。「反NHK特集」の中で、立花氏のインタビューを入れたい、ということであった。私の記憶では、この時が私と立花氏の二回目の邂逅である。より正確に言えば、東京東部にある立花氏の事務所に直接行こうと思ったが、先方が「多忙」(だったと思う)の理由で電話取材になった。しかしそれは正確には電話取材ではなく、スカイプを使ったテレビ電話取材だった。
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