1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

ウーマン村本×パックン「カウンターパンチは全部ありだと思う」

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月7日 17時10分

村本 うーん。

パックン 笑っている人がいるかもしれないが、泣いている人がそれを上回る。笑う人の笑いのために、深い傷を受ける人を犠牲にしていいでしょうか。

村本 いい質問ですねぇ......。

カナダのモントリオールでスタンダップをやっている日本人の女の人から、動画が送られてきたんですよ。見てくれって。どういうネタかというと、彼女が「福島は安全です。来てください」「食べ物もおいしいし」って言って頭を触ったら、髪がばっさり抜ける。それでみんなが笑っている。それを見たとき、すごい不快な感じはしたんです。ネットフリックスでデイブ・シャペルが原爆のネタをやっているのを見たときは、僕は日本に住んでいて、長崎の原爆被害に遭っている人とも知り合いなので、やっぱりもやもやした。



「どこかで誰かが不快な思いをしている」

パックン その場で笑った人は、自分の差別意識が強化されることがあると思う。昨日も英語でスタンダップをやっている芸人さんに取材したんですが、日本のお笑いはあまりメッセージがない、海外のお笑いはメッセージを残す、みんなが持って帰るものがないとネタとは言えないと言ってた。

ただ、それが間違ったメッセージである危険性も考えないといけないと思うんですよ。かつてナチス・ドイツのプロパガンダ紙には、ユダヤ人をばかにする風刺画が毎日のように載っていた。確かに笑えるものもあったが、それがホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を助長したとも言える。果たして芸人は無責任でいいのか。

村本 仕事がなくなることを覚悟のうえでの発言かどうかだと、僕は思う。結局、料理人がウサギを使おうが、ウシを使おうが、ブタを使おうが、どこかで、「え、ウサギ使うの?」「ウシ使うの?」と言う人はいると思う。例えば、全世界が見ているチャンネルで芸人がネタをやる。不快だと思ったらボタンを押してくださいとなったら、1秒に1回はボタンが押されると思うんですね。それぐらい......。

パックン どこかで誰かが不快な思いをしている。

村本 例えば交通事故のネタをしたとき、お客さんの中に事故で家族を亡くした人がいるかもしれない。火事のネタもなんかもそう。僕は今、ジャニーズの嵐のネタをやっているんですよ。西日本の豪雨ですぐに被災地に行ったのは松潤(松本潤)。ただ、豪雨の後に嵐が行っちゃダメ、というネタ。みんなウケるけど、「嵐をばかにしてるんですか」とか「被災地の人に失礼です」っていうのが何通か来る。最近は、これはジョークですから、いちいち本気にしないでくださいねって頭に入れるわけですよ。あとはもう、ここは冗談の夢の国なので、傷つくのが怖かったら来ないのがいいんじゃないって。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください