不寛容な排他主義:カシミールの自治を剥奪したモディには「裏の顔」がある
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月16日 16時15分
つまり、経済通という「表の顔」と、強硬なヒンズー至上主義者という「裏の顔」を合わせ持っているということになる。
今回のジャム・カシミール州の自治権剥奪では、「裏の顔」が前面に出てきた。折しも世界的にトランプ米大統領らの偏狭なナショナリズムやポピュリズム(大衆迎合主義)がまん延する中、今なら排他的な政策が国際社会で批判されることも比較的少ない。モディ首相はこうした潮流にも便乗する形で、イスラム教徒との融和実現というガンジーの悲願を葬り去った。
それがモディ首相の言うような「平和をもたらすための歴史的決断」なのか、「歴史的大失敗」に終わるのかはまだ分からないが、少なくともカシミールのイスラム教徒住民の反インド感情を一層高めていくことは間違いない。
[執筆者]
杉山文彦(すぎやま・ふみひこ)
時事通信社解説委員兼Janet編集長
ニューデリー特派員、カイロ特派員として、アフガニスタン内戦や中東情勢など途上国の問題を幅広く取材。パリ支局長を経て2012年外信部長。16年10月から編集局総務兼解説委員。18年7月から現職。編著に『世界テロリズム・マップ 憎しみの連鎖を断ち切るには』(平凡社新書)など。
※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。
杉山文彦(時事通信社解説委員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載
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