アジアに、アメリカに頼れない「フィンランド化」の波が来る
ニューズウィーク日本版 / 2019年9月2日 19時0分
香港での危機や日韓関係の悪化は、新たな時代の序章に過ぎない。アジアの安定はもはや当たり前ではなくなっている。
<参考記事>嘘つき大統領に「汚れ役」首相──中国にも嫌われる韓国
まず第1に、中国はもはや私たちの知っていた中国ではない。かつて毎年2ケタの経済成長を遂げ、リスクを嫌う顔のないテクノクラートの一団(厳しい任期制限によってその行動は抑制されていた)によって支配されていた中国は、今や経済成長率はせいぜい6%で、1人の強硬な独裁者によって支配される国となっている。
景気が減速する一方で、中国経済は熟練度の高い労働者を擁する、より成熟したシステムへと変容しつつある。新しい中流階級は愛国主義的であるとともに要求水準が高い傾向にあり、政府にも高水準のパフォーマンスを求めている。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席はこうした中産階級に対し、中国はナショナリズムを高め、経済改革を推し進めることで、ユーラシア大陸に広がる交易路や港を手中に収める「世界大国」になれると思わせている。
だが習はまた、顔認証といった過去にはなかったさまざまなテクノロジーを用いて国民の行動を監視している。政治的に無傷な状態を維持しつつ、債務過剰で輸出主導型の経済を改革するには、かつてソ連を率いたミハイル・ゴルバチョフ書記長とは逆に、政治的コントロールを緩めるのではなく厳しくしなければならないと習は承知している。
中国海軍は急速に規模を拡大し、アジアのシーレーン全域に展開している。これを背景に、アメリカが過去75年間にわたって一極支配してきた海上軍事秩序は、多極的で不安定なものへと変容していくだろう。この一極支配による海上軍事秩序は、スパイクマンの日米同盟ビジョンの隠れたカギだった。だが多極化はすでに始まっている。
朝鮮半島と日本の対立
具体的には、多くの専門家やメディアは南シナ海と東シナ海における中国海軍の侵犯行為を個別の案件と捉える傾向にあった。だが実際には、これらの事案は西太平洋全体のアメリカの制海権に影響を与えている。
米海兵隊が駐留するオーストラリア北部ダーウィンの99年間の港湾管理権を中国企業が獲得するなど、中国が外国の港湾開発に乗り出す事例も相次いでいる。カンボジアの海岸リゾート、シアヌークビルでの大規模プロジェクトは、南シナ海とインド洋をつなぐ海域をどれくらい中国が手中に収めつつあるかを示している。中国はこの10年間にインド洋における港湾ネットワークを築いてきた。
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