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香港デモ、進化系ゲリラ戦術の内側

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月5日 18時25分

テレグラムでは、何万人もが参加する抗議運動グループがいくつも生まれた。ユーザーはチャットを通じて、警官隊の配置や脱出ルート、デモのターゲットなど、随時情報を更新し、シェアできる。ターゲットごとに異なるグループができるため、同時多発的に複数のターゲットにデモをかけることも可能だ。



テレグラムでは、投票ボット機能を活用すれば、デモを続けるか、解散するか、参加者の意見をすぐさま集約できる。例えば8月にはユーザーの79%が香港国際空港をターゲットにすることに賛成したため、ロビーなどが占拠され、一時は数百便が欠航する騒ぎになった。

デモ参加者たちは、警官隊との衝突など路上の騒乱で声が聞こえないときに、簡単で分かりやすい手のサインで、仲間同士のコミュニケーションをとる方法も編み出したと、香港に拠点を置くライターで弁護士のアンソニー・ダピランは言う。

ヘルメットや水、生理食塩水、ハサミ、傘など必要な物を、サインで仲間に伝えるのだ。デモ隊が必要な物を何でも確保しているように見え、補給チームがまるで神業のように必要とされる場所に現れるのはこのためだ。

During the protests, demonstrators use a complex system of hand signals and coordination to organize the masses. pic.twitter.com/uOJ5dvAP2w— Haley Willis (@heytherehaIey) August 10, 2019

言い換えれば、香港のデモ隊は、カンフー映画で鳴らした故ブルース・リーの目指した境地、「水のように形がなく、変幻自在」に達している、ということだ。1カ所を占拠するという使い古された戦術を避け、整然としたデモもすれば、状況に応じて奇襲的な行動や暴力的な攻撃も行う。こうした捉えどころのなさから、一部のウォッチャーは今回の香港デモを「水の革命」と呼んでいる。

2014年の「雨傘革命」は市民生活に支障をきたしたため、幅広い支持を長くつなぎ止めることはできなかった。繁華街に買い物にも行けないことに人々はうんざりしたのだ。今回は違う。あちこち移動する一時的な妨害なら、はるかに受け入れやすい。デモ隊はターゲットを次々に変えて、混乱を分散させている。

「(香港)当局の厳しい取り締まりと中国政府の威嚇にもかかわらず」、運動が持続していることは注目に値すると、ペンシルベニア大学ロースクールの教授で、中国法と中国政治の専門家であるジャック・デリールは言う。

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